待機児童や保育士不足の問題、介護士不足の問題など深刻な問題が山積している。かつて子育て世代は、専業主婦として子育てに専念していた。しかし、非正規雇用の拡大によって「一人の稼ぎで生活していけない」という現実から子供を保育園に預けて働きに出なくてはならない人が増えてきた。そのことが待機児童を生み出すことになってきたのである。待機児童をなくすために保育園の受け入れ人数を増やすというが、それはきわめて危険であるし、保育士の労働強化でもある。一方、喜ばしいことだが人の寿命が延びて高齢者が増えてきた。それは同時に介護問題に直結してくる。保育園や介護現場に働く人が不足してくるのは当然かもしれない。しかし保育士や介護士が国家資格を取得し現場に出て働いてもすぐに退職してしまい、他の産業に働きに行くという。それは何故か。結論は簡単である。「他産業よりも賃金が安い」からである。日本の将来像を描いてみる時、それは由々しき問題である。確かに国も予算をつけて働く人の賃金を上げなくてはならないという動きがある。それは当然というべきである。だが、予算をつけて保育現場や介護現場に働く人たちの賃金が実際に上がるのだろうか。国等が予算をつけて「実際に働く人が予算の中の賃金相当額を手にする」ことができるだろうか。それをどうやって担保するというのだろうか。賃金を引き上げるために国等が予算をつけて補助しても苦しい運営のなかで経費や設備投資に回ることがないと誰が保障できるのだろうか。働く人の賃金を上げるための予算をつけると同時に「働く人が賃金相当額を実際に手にすることができる」そのシステムをつくらなければ何の意味もないだろう。1949年ILOにおいて採択された「94号条約」を創設すること。94号条約には国等が支払った賃金相当額が働く人の手に渡ることが決められている。賃金引き上げのためにつけられた予算が実際に働く人が、引き上げ相当分の賃金を手にすることができるシステムが予算と同時に創設されなければ賃金が引き上げられるということを担保することはできない。1951年(昭和26年)5月15日参議院労働委員会に「国等を相手方とする契約における労働条項に関する法律制定の請願」が提出された。それを受け労働省(当時)は「国等の契約に於ける労働条項に関する要綱」を発表し一定の論議がされた。しかし戦後復興の時期でもあり、その法案が陽の目を見ることもなく現在の厚生労働省の棚の中にある。その「まぼろしの法案」(私がそう呼んでいる言葉)を今一度引き出し論議をしながら現在の日本の保育や介護現場に働く人のために創設し、賃金引き上げ相当分の金額が働く人の手に渡るシステム作りが必要である。千葉県野田市議会で公共工事に関する公契約条例が2009年9月29日に一人の反対もなく全会一致で可決成立した。日弁連は2011年4月14日に「公契約法・公契約条例の制定を求める意見書」を公表している。
1949年に採択された94号条約とは何かといえば、公契約法とは国で創設するものであり、公契約条例とは地方自治体で創設するものである。野田市で成立した公契約条例は公共工事に適用する条例として全国に広がりつつある。ILOでは「税金が一部であっても補助されていれば公契約を適用する」となっている。そうであれば国等が予算補助を行えば保育介護現場も当然公契約の適用の範囲である。公契約は、保育所や介護施設のある一定の地域自治体のすべての職種の労働者の賃金を調査し平均賃金を算出。その賃金を公契約の中で働く人に支払うというものである。公契約が創設された地域にあっては、自治体や国は、保育介護現場で働く人に地域の労働者の平均賃金が実際に支払われているかどうかを賃金台帳や抜き打ち労働者への聞き取り調査を行うこと。もしも支払われていないことが判明した場合は、支払われていない差額分を国や自治体は補助金から差し引き直接労働者へ支払うことなどをILOは決めている。こうしたシステムを創設することによって国等で決めた補助金が実際に働く人の手に渡ることになる。予算と同時にこのシステムを成立させなければ、いくら予算をつけても働く人が実際に賃金相当額を手にすることは担保されないだろう。【高野勇一】
1949年に採択された94号条約とは何かといえば、公契約法とは国で創設するものであり、公契約条例とは地方自治体で創設するものである。野田市で成立した公契約条例は公共工事に適用する条例として全国に広がりつつある。ILOでは「税金が一部であっても補助されていれば公契約を適用する」となっている。そうであれば国等が予算補助を行えば保育介護現場も当然公契約の適用の範囲である。公契約は、保育所や介護施設のある一定の地域自治体のすべての職種の労働者の賃金を調査し平均賃金を算出。その賃金を公契約の中で働く人に支払うというものである。公契約が創設された地域にあっては、自治体や国は、保育介護現場で働く人に地域の労働者の平均賃金が実際に支払われているかどうかを賃金台帳や抜き打ち労働者への聞き取り調査を行うこと。もしも支払われていないことが判明した場合は、支払われていない差額分を国や自治体は補助金から差し引き直接労働者へ支払うことなどをILOは決めている。こうしたシステムを創設することによって国等で決めた補助金が実際に働く人の手に渡ることになる。予算と同時にこのシステムを成立させなければ、いくら予算をつけても働く人が実際に賃金相当額を手にすることは担保されないだろう。【高野勇一】