群盗千秋楽後、未見の他組ファンの友人に送りつけた感想にツイッターの感想足したりしたもの。
ただひたすらに長い。
群盗達と共に1週間を駆け抜けたよ。
博多座に上級生と路線スターを、専科バウに中堅を集め、完全に割りを食った群盗組(28人中、新公内22人・研3以下11人)という感じの座組でしたが、爽やかな情熱に満ち溢れ、良いものを観た…!という気持ちになりました。
異母弟と叔父の陰謀により領主である父に勘当され、一時は義賊として歓迎された民衆に裏切られ、父は死に、自分を嵌めた叔父と弟も死に、恋人を自分の手で殺し、最後に自首して処刑されるというわりと悲惨な話なのに、あまりにも爽やかで熱く瑞々しいものだから、なぜか爽快感さえあった。
青春のきらめき、命のかがやき…。
役の若者達の情熱と正義心に満ちた無鉄砲な生き方と、役者本人の全力で今を一生懸命生きてるきらめき、役と役者が被ってもはや眩しかった…。青春のかけらを目一杯集めて作った話だった。
今公演はドラマシティから始まり、私は東京初日からしか観てないけど、出演者、特に下級生があまりにも楽しそうで充実感に満ちた顔をしているものだからうっかり私まで嬉しくなってしまった。
研1に至るまで台詞があり、皆の顔が分かる仕組みだったよ。その分台詞というものを初めて喋る子も居て、キキちゃん曰く「よし!大きい声出た!次は芝居な!」という所からの出発だったらしく、見本として色んな役をしました貴婦人も。だそうで。笑
いゃ、技術的な拙さは多少あるものの、ソロがある人は誰が歌ってもそれなりに上手いし(半分以上の人にソロあり)、下級生も声が良い子が多くてね、びっくり。
なんなら大きな役も研1.2がやってるけど上手い。宙組の未来は明るい。
キキちゃん自身もすごく良かった。歌の表現力は増してるし、丁寧に心の動きを演じてた。徹頭徹尾見せ方もビジュアルも格好良かった。さらに洗練されてきたなと。
でも何より、若い子が多いこのカンパニーを率いて、自分も真ん中で輝き皆を輝かせ、皆で同じ方向を向いてここまで熱量高く良い舞台を作り上げたという結果を残した事が一番大きいと思う。劇団からの「真ん中でやっていけるかチャレンジ」は花マルでクリアしたかなと。
本人も「全員で作り上げた舞台なので、どこが一番好きな場面とかは思いつかない。全体を観て欲しい。そして下級生の名前と顔を1人でも多く覚えて帰ってもらって、次の大劇場でも見つけてあげてください」「観に来た方々に、下級生を褒められるのが嬉しい」と、お茶会で言ってたようで。
人の面倒見るのがとても苦手そうなキキちゃんが立派な上級生になったねぇ…立場は人を育てるね…
で、中身なんですが、小柳先生の「考えるな、感じろ!」「盗んだバイクで走り出す、みたいな」という言葉通り、若さ故の行動からどんどん悪循環に陥り破滅へ転がっていくんですね。
シラーを全く存じ上げなかったんですがベートーヴェン第九(フィナーレで踊ってる)の歓喜の歌の歌詞を書いた人なのね。そして「若きウェルテルの悩み」とかの頃のドイツ文学なんですね。理論より感情を優先するという「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)」の文学運動の頃の作品なので動機は明確でなくても良いと…。なるほど。若さが眩しいよ。
カールがよその大学に行くために城を離れることが発端になって、フランツ(異母弟・幼少期に城に引き取られた・瑠風輝)が血迷ってカールを陥れていくんだけど、もう、まだ見ぬ世界に無邪気に胸弾ませるキラキラしたカールを見ていたらあまりに眩しすぎて、強すぎる光はその分濃い闇を産むよなぁと思ってしまったよ。
「もう真綿にくるまれているような人生は嫌なんだ!」「城の外には街がある。街の外には国がある。国の外には世界がある。オレは世界を見てみたいんだ」という台詞がもう真綿にくるまれて生きてる人だわ。外の厳しさを知ってるフランツには、何故真綿にくるまれて生きていてはいけないのか理解出来ないだろうなと。鈍感だけど真っ直ぐで自分に手を差し伸べ受け入れてくれた優しい兄の事は好きで、でもあれでは同時に苛立ちや嫉妬心も芽生えてしまうの仕方ないわ…フランツ可哀想に…と2度目以降はずっと思ってました。
幼少期の兄弟+従姉妹のアマーリアのエピソードが入る事により成長した後の兄弟エピソードがより辛いという定石だけど、幼少期3人が上手い。小フランツ(真白悠希)も大人フランツもなんとも満たされない絶妙な顔をするんだ。
後半にフランツの「憎しみと愛のタペストリー」という曲があるんだけど、見事に愛憎で織り上げてたよ…!千秋楽に向けてどんどん感情が乗ってたよ…良かった…
大学入学式前に、グーテちゃん達(ストーリーテラー的に踊ったりする天使ちゃん)に目を見開いた笑顔で両手高くお手振りするキキちゃんの顔が好きだわ。あの何も考えてなさそうな可愛い顔、アーネストでよく観た気がする…
フランツと叔父上(ヘルマン・恋人でもある従姉妹の父・希峰かなた)の策略によりカールは勘当され、大学には啓蒙思想の論文は受理されず、ほとほと落ち込んでいるところで大学の友人達と「これで本当の自由だ」「俺たちは俺たちのやり方で世の中を救うんだ」と盛り上がり義賊になるんだけど、初めは「正義は勝つ。皆を喜ばせたい。悪いやつから取り戻すんだ!」と、正義感と楽しさ半分で群盗行為に勤しむんだよね。でも、群盗に加わる幼い少年(グリム 湖々さくら)の命を救うために初めて人の命を奪ってしまう。その時やっと自分達のやっている事の重大さを理解し慄くんだけど、小さな少年から迸る最後の言葉に群盗達は突き動かされて最悪の結末に走ってくんだよ。彼女の言葉にはその力があった。
言葉は人を救いもするけど、この場合は呪いと紙一重だわ。
1幕最後の「あぁ…ここから先は悲劇しか待ってないんだな。もう彼らは戻れないんだな」という空気に変わる所の演出がとても好き。そこから舞台上に冷たい空気が混ざり始めて鳥肌が立った。
「そっちじゃない、そっちに行っちゃだめ!」と思いながらも客席で座ってるしかない無力感焦燥感がたまらなかった。
民衆には群盗の首領は貴族だと知られて追われボヘミアの森へ逃げてた所へ、カールの領地から青年コジンスキー(風色日向・芹香ファンは概ねナニーロと呼んでる)がやってきて「貴方の父は死に、異母弟と叔父上殿が治めているが民衆は貧困に喘いでいる。助けてくれ」との言葉に領地へ隠れ戻るんだけど、弟と自分の恋人アマーリアとの結婚式が翌日に控えてて。この時再会した喪服のアマーリアとのデュエットダンスがあるんだけど甚く官能的でした…。キキちゃんは相手役が居ると男っぷりが上がるのがたまらんですわ。
千秋楽が一番艶っぽかったな…。優しく大事に扱いつつもアマーリアに吸い寄せられる情熱的な眼差しと全身から溢れ出す色気…。離れた時はまだ少年の面影を残していたけど、男として帰って来たんだなと。
家を離れた時はカールはまだアマーリアを好きだという自覚もあまりないんなんだけど(アマーリアはちゃんとカールが好き)、従兄弟=幼馴染=幼い可愛い恋人なのよね。
そのまま成長して、ぼんやりとアマーリアを「好き・大事にしたい」の状態から、戻れない故郷(その象徴のアマーリア)に想いを募らせて気持ちが成長し、久々の再会により「愛している」に変化した上での情熱的なデュエットダンス…。
カールがアマーリア(戻れない故郷)の話を初めてする相手が、カールに想いを寄せるリーベ(華妃まいあ)っていうのがまた。リーベと夜更けに話しているうちにアマーリアを思い出し、アマーリアの話をするうちに彼女への甘い気持ちを育てているんだもんな。なんとも残酷…。カールは育ちの良い坊ちゃんだからその辺りあまり人の気持ちを察するのは上手くないのよね。
そのせいで最後リーベがカールを裏切る事になるんだけど、リーベも苦渋の決断で、愛しくて愛しくてそして憎くなってしまったのがよく伝わる芝居だった。
リーベってドイツ語で愛 だよね。切ない。
領主(りんきら・カールの父)である兄と、足が生まれつき悪く兄の臣下に降りざるを得ずコンプレックスを抱く弟(叔父上)の対比と、領主の嫡男で太陽のようなカールと、水車小屋の娘が産んだ子でありながら母が死に子供の頃に城に引き取られたフランツの、親子二代の兄弟の愛憎がね…辛くもとても面白かった。最終的に叔父が自分の兄を殺すんだけど、自分の動かない足と同じ方の足を刺すんだよ…何それたまらない…!
フランツもうっかりカールを庇ったり、カールの差し伸べた手を「その手は生まれ変わったら取りましょう」と言ったり…生まれ変わっても兄弟で居たいんだねぇ…!フランツがアマーリアを取ったのもカールへの愛憎有りきだもんね…「兄さんが手を離したから貰ったまでですよ!」。憎しみと愛でタペストリー織るだけあるわ(タペストリーの話はしばらくもえこちゃんと切り離される事は無いだろう…)
そしてカールは故郷の象徴であるアマーリアを殺す事によって故郷との別れ、過去との決別、旧体制と決別するのか。
原作には無い親子二代の兄弟の対比がとても良かった。りんきらがゴリゴリ舞台を締めてたわ。安心感がすごい。流石だわ。ヘルマンわんたくんも凄かった…あまりにも上手い。研6?嘘でしょ。良い役者だ。
そして最後に、希望はヴァールハイト(鷹翔千空)の中に芽を落とすの。
アマーリアのじゅりちゃんが本当に美しい声で歌うのよ。
故郷を離るる歌の、峰里ちゃんの歌う「園の小百合 撫子 垣根の千草」が特に好きだった。あの綺麗な歌声から紡がれる美しい景色の描写が素敵だった。
カールと歌う時は二人の気持ちが寄り添ってるんだけど、フランツが勝手に一緒に歌う時はちゃんとバラバラなんだよね…。あれ切ない。
学生達が意気揚々と歌う学生歌もどんどん好きになった。
「♪我が行く道は 遥けき彼方」群盗メンバーそれぞれ歌い出しが順番でそれも良かった。
もうね、親子兄弟の情と友情と未来への希望と恋を、宝塚らしさで包んで疾走した青春盛り沢山の内容だったよ…眩しかったよ…(それしか言えない)
群盗を結成する時の希望に満ちた学生達の酒場が、どうにもレミゼのABCカフェを思い出させてそこから既に切なくなった。カールの生まれ年は1759年。群盗の舞台はABCカフェ(1832年)の50年程前ですわ…フランス革命もまだ…
群盗結成時はまだぴよぴよした可愛い顔の坊っちゃんなキキちゃんだけど、一幕最後にもう後戻りは出来ないとなって振り返った目から光が消えた芹香さんはすこぶる格好良かった…三白眼万歳。
カールが故郷にいる頃の純粋でまだキラキラ可愛いお目目から、話が進むにつれ心情の変化と共に目が鋭くなっていくけど中身は真っ直ぐなままなんだよね。
だから最後にストンと「間違った事に、間違った方法でやり返してはいけなかった(ニュアンス)」という選択をするのも納得できた。
仲間と共に理想を求め悩み苦しみ希望(と思っているもの)に突き進んだ挙句、手から溢れ落ちて最後は処刑…という大まかな流れは同じなのに、なんで芹香さんと望海さん(ひかりふる路)はこんなに違うの…?と震えたりしましたが、えぇ、持ち味…。
演出も方向性の違うオタクの小柳先生と生田先生だしね。
オープニング(プロローグではなくオープニングと言いたくなる)も疾走感ある演出でアニメかヒーロー物が始まるのかと。キキちゃんには青春ものを当てたくなるのかしら。
群盗、とにかく舞台上の空間全てが美しかった。
戯曲からそのまま持ってきた熱く美しい言葉や、黒と赤と茶のシンプルな舞台装置も、四季と時間を想像させる照明も、下級生が多くとも内面の充実感を感じさせる活気に溢れた姿も、上級生の空間を埋める美しい立ち姿も、芹香さんの圧倒的な華やかさ・舞台上の熱全てを背負った中心の存在感、全てが美しかった…!
良い舞台を観たなぁ…ってとても満足してるよ。
そしてキキちゃんのビジュアルが常にパーフェクト。
ポスターから最高点叩き出してましたが、貴族姿のコート(アビ・ア・ラ・フランセーズ)に巻毛の付け毛から、短髪の群盗の黒い衣装2着、エピローグの白いシャツに黒パンツ、フィナーレの赤い衣装、髪型含め全てが格好良いし顔もお化粧も綺麗で最高だった…。
ポスターと言えば、あの背景の木立ちはボヘミアの森だったのね。ボヘミアの森へ逃れる時には、群盗は既に決定的な罪を犯した後。ポスターは森へ逃れた後のカールの目なのか…
東京初日のご挨拶の「大阪公演を経て、この、2階席まである広い空間をどう埋めて行くかを課題に頑張って行きたい(ニュアンス)」というご挨拶から、そうだよね、倍近い客席数だもんね、下級生には大きな課題と挑戦だよね…!と、キキちゃんが下級生達を、見守り、鼓舞し、引っ張りあげてお稽古と大阪公演に臨んでた姿が想像できて胸がいっぱいになったよ。カテコで隣の二人(もえこちゃんとじゅりちゃん)と顔を見合わせてると思ったけど、あれは左右に広がる下級生達と目を合わせてたんだな。そうやって皆に目を配ってここまできたんだなと。
そして千秋楽はキキちゃんの悔いは無いとの言葉通り、本人も出演者達も清々しい充実感に満ちた顔で並んでた。今出来るだけ全てやりきった姿に溢れてた。泣いてる子が沢山居てね、後々まで出演者の心に残る舞台になるだろうなと。特に下級生の。上級生にとっても自分のキャリアを振り返った時の機会になるだろうし。
役も役者も「今」を強く感じる公演。宝塚は常に「今」だけど、群盗は特にそれを感じた。
宝塚って舞台を通してジェンヌ自身を観る・愛でる文化も強いと思うんだけど、群盗は役を通して彼女達の命のかがやきを強く感じる。もはや眩しい。下級生が多くもちろん技術的には未熟なところはあるけれども、彼女達の情熱・生き様、「今」を観せてもらったという気持ちが大きい。この「今」って、宝塚が宝塚である要素の大きな一つだと思うんだよ。
そしてそんな情熱迸る舞台のクオリティを支え引っ張っているのが、キキちゃん始めきゃのんさんりんきらさんといった上級生組で。真ん中が大きく腕を広げて立ち安定しているからこそ、若手が伸び伸びと舞台に向かえるという事を体現してたなと。
本当に良い舞台を観せてもらった…。
そして組子の皆さん良い座組と舞台に会えて本当に良かったねと。そして芹香さん、おめでとう。
さらに千秋楽カテコでもえこちゃん音頭のサプライズ劇中台詞を使った掛け声が。
もえこちゃん「おい、待てよ!誓いを忘れたのか?!」
キキちゃん「!???」
全員『次は、ラスベガスに行こうぜ!!』
お口を両手で隠して大笑いするキキちゃん「なんか皆にやにやしてると思ったら〜…!」
キキちゃん宙組でも愛されてるねぇ…!と少しの安心と沢山の嬉しさと。もう丸々全部、役も出演者も青春だったよ。
本当に楽しく濃い1週間でした。
あと東京初日に蘭寿さんと蘭ちゃん麗ちゃんと観劇が被ったのも良い思い出。
私、年に一度は蘭寿さんと観劇が被ってるのよ…うふふ。
ただひたすらに長い。
群盗達と共に1週間を駆け抜けたよ。
博多座に上級生と路線スターを、専科バウに中堅を集め、完全に割りを食った群盗組(28人中、新公内22人・研3以下11人)という感じの座組でしたが、爽やかな情熱に満ち溢れ、良いものを観た…!という気持ちになりました。
異母弟と叔父の陰謀により領主である父に勘当され、一時は義賊として歓迎された民衆に裏切られ、父は死に、自分を嵌めた叔父と弟も死に、恋人を自分の手で殺し、最後に自首して処刑されるというわりと悲惨な話なのに、あまりにも爽やかで熱く瑞々しいものだから、なぜか爽快感さえあった。
青春のきらめき、命のかがやき…。
役の若者達の情熱と正義心に満ちた無鉄砲な生き方と、役者本人の全力で今を一生懸命生きてるきらめき、役と役者が被ってもはや眩しかった…。青春のかけらを目一杯集めて作った話だった。
今公演はドラマシティから始まり、私は東京初日からしか観てないけど、出演者、特に下級生があまりにも楽しそうで充実感に満ちた顔をしているものだからうっかり私まで嬉しくなってしまった。
研1に至るまで台詞があり、皆の顔が分かる仕組みだったよ。その分台詞というものを初めて喋る子も居て、キキちゃん曰く「よし!大きい声出た!次は芝居な!」という所からの出発だったらしく、見本として色んな役をしました貴婦人も。だそうで。笑
いゃ、技術的な拙さは多少あるものの、ソロがある人は誰が歌ってもそれなりに上手いし(半分以上の人にソロあり)、下級生も声が良い子が多くてね、びっくり。
なんなら大きな役も研1.2がやってるけど上手い。宙組の未来は明るい。
キキちゃん自身もすごく良かった。歌の表現力は増してるし、丁寧に心の動きを演じてた。徹頭徹尾見せ方もビジュアルも格好良かった。さらに洗練されてきたなと。
でも何より、若い子が多いこのカンパニーを率いて、自分も真ん中で輝き皆を輝かせ、皆で同じ方向を向いてここまで熱量高く良い舞台を作り上げたという結果を残した事が一番大きいと思う。劇団からの「真ん中でやっていけるかチャレンジ」は花マルでクリアしたかなと。
本人も「全員で作り上げた舞台なので、どこが一番好きな場面とかは思いつかない。全体を観て欲しい。そして下級生の名前と顔を1人でも多く覚えて帰ってもらって、次の大劇場でも見つけてあげてください」「観に来た方々に、下級生を褒められるのが嬉しい」と、お茶会で言ってたようで。
人の面倒見るのがとても苦手そうなキキちゃんが立派な上級生になったねぇ…立場は人を育てるね…
で、中身なんですが、小柳先生の「考えるな、感じろ!」「盗んだバイクで走り出す、みたいな」という言葉通り、若さ故の行動からどんどん悪循環に陥り破滅へ転がっていくんですね。
シラーを全く存じ上げなかったんですがベートーヴェン第九(フィナーレで踊ってる)の歓喜の歌の歌詞を書いた人なのね。そして「若きウェルテルの悩み」とかの頃のドイツ文学なんですね。理論より感情を優先するという「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)」の文学運動の頃の作品なので動機は明確でなくても良いと…。なるほど。若さが眩しいよ。
カールがよその大学に行くために城を離れることが発端になって、フランツ(異母弟・幼少期に城に引き取られた・瑠風輝)が血迷ってカールを陥れていくんだけど、もう、まだ見ぬ世界に無邪気に胸弾ませるキラキラしたカールを見ていたらあまりに眩しすぎて、強すぎる光はその分濃い闇を産むよなぁと思ってしまったよ。
「もう真綿にくるまれているような人生は嫌なんだ!」「城の外には街がある。街の外には国がある。国の外には世界がある。オレは世界を見てみたいんだ」という台詞がもう真綿にくるまれて生きてる人だわ。外の厳しさを知ってるフランツには、何故真綿にくるまれて生きていてはいけないのか理解出来ないだろうなと。鈍感だけど真っ直ぐで自分に手を差し伸べ受け入れてくれた優しい兄の事は好きで、でもあれでは同時に苛立ちや嫉妬心も芽生えてしまうの仕方ないわ…フランツ可哀想に…と2度目以降はずっと思ってました。
幼少期の兄弟+従姉妹のアマーリアのエピソードが入る事により成長した後の兄弟エピソードがより辛いという定石だけど、幼少期3人が上手い。小フランツ(真白悠希)も大人フランツもなんとも満たされない絶妙な顔をするんだ。
後半にフランツの「憎しみと愛のタペストリー」という曲があるんだけど、見事に愛憎で織り上げてたよ…!千秋楽に向けてどんどん感情が乗ってたよ…良かった…
大学入学式前に、グーテちゃん達(ストーリーテラー的に踊ったりする天使ちゃん)に目を見開いた笑顔で両手高くお手振りするキキちゃんの顔が好きだわ。あの何も考えてなさそうな可愛い顔、アーネストでよく観た気がする…
フランツと叔父上(ヘルマン・恋人でもある従姉妹の父・希峰かなた)の策略によりカールは勘当され、大学には啓蒙思想の論文は受理されず、ほとほと落ち込んでいるところで大学の友人達と「これで本当の自由だ」「俺たちは俺たちのやり方で世の中を救うんだ」と盛り上がり義賊になるんだけど、初めは「正義は勝つ。皆を喜ばせたい。悪いやつから取り戻すんだ!」と、正義感と楽しさ半分で群盗行為に勤しむんだよね。でも、群盗に加わる幼い少年(グリム 湖々さくら)の命を救うために初めて人の命を奪ってしまう。その時やっと自分達のやっている事の重大さを理解し慄くんだけど、小さな少年から迸る最後の言葉に群盗達は突き動かされて最悪の結末に走ってくんだよ。彼女の言葉にはその力があった。
言葉は人を救いもするけど、この場合は呪いと紙一重だわ。
1幕最後の「あぁ…ここから先は悲劇しか待ってないんだな。もう彼らは戻れないんだな」という空気に変わる所の演出がとても好き。そこから舞台上に冷たい空気が混ざり始めて鳥肌が立った。
「そっちじゃない、そっちに行っちゃだめ!」と思いながらも客席で座ってるしかない無力感焦燥感がたまらなかった。
民衆には群盗の首領は貴族だと知られて追われボヘミアの森へ逃げてた所へ、カールの領地から青年コジンスキー(風色日向・芹香ファンは概ねナニーロと呼んでる)がやってきて「貴方の父は死に、異母弟と叔父上殿が治めているが民衆は貧困に喘いでいる。助けてくれ」との言葉に領地へ隠れ戻るんだけど、弟と自分の恋人アマーリアとの結婚式が翌日に控えてて。この時再会した喪服のアマーリアとのデュエットダンスがあるんだけど甚く官能的でした…。キキちゃんは相手役が居ると男っぷりが上がるのがたまらんですわ。
千秋楽が一番艶っぽかったな…。優しく大事に扱いつつもアマーリアに吸い寄せられる情熱的な眼差しと全身から溢れ出す色気…。離れた時はまだ少年の面影を残していたけど、男として帰って来たんだなと。
家を離れた時はカールはまだアマーリアを好きだという自覚もあまりないんなんだけど(アマーリアはちゃんとカールが好き)、従兄弟=幼馴染=幼い可愛い恋人なのよね。
そのまま成長して、ぼんやりとアマーリアを「好き・大事にしたい」の状態から、戻れない故郷(その象徴のアマーリア)に想いを募らせて気持ちが成長し、久々の再会により「愛している」に変化した上での情熱的なデュエットダンス…。
カールがアマーリア(戻れない故郷)の話を初めてする相手が、カールに想いを寄せるリーベ(華妃まいあ)っていうのがまた。リーベと夜更けに話しているうちにアマーリアを思い出し、アマーリアの話をするうちに彼女への甘い気持ちを育てているんだもんな。なんとも残酷…。カールは育ちの良い坊ちゃんだからその辺りあまり人の気持ちを察するのは上手くないのよね。
そのせいで最後リーベがカールを裏切る事になるんだけど、リーベも苦渋の決断で、愛しくて愛しくてそして憎くなってしまったのがよく伝わる芝居だった。
リーベってドイツ語で愛 だよね。切ない。
領主(りんきら・カールの父)である兄と、足が生まれつき悪く兄の臣下に降りざるを得ずコンプレックスを抱く弟(叔父上)の対比と、領主の嫡男で太陽のようなカールと、水車小屋の娘が産んだ子でありながら母が死に子供の頃に城に引き取られたフランツの、親子二代の兄弟の愛憎がね…辛くもとても面白かった。最終的に叔父が自分の兄を殺すんだけど、自分の動かない足と同じ方の足を刺すんだよ…何それたまらない…!
フランツもうっかりカールを庇ったり、カールの差し伸べた手を「その手は生まれ変わったら取りましょう」と言ったり…生まれ変わっても兄弟で居たいんだねぇ…!フランツがアマーリアを取ったのもカールへの愛憎有りきだもんね…「兄さんが手を離したから貰ったまでですよ!」。憎しみと愛でタペストリー織るだけあるわ(タペストリーの話はしばらくもえこちゃんと切り離される事は無いだろう…)
そしてカールは故郷の象徴であるアマーリアを殺す事によって故郷との別れ、過去との決別、旧体制と決別するのか。
原作には無い親子二代の兄弟の対比がとても良かった。りんきらがゴリゴリ舞台を締めてたわ。安心感がすごい。流石だわ。ヘルマンわんたくんも凄かった…あまりにも上手い。研6?嘘でしょ。良い役者だ。
そして最後に、希望はヴァールハイト(鷹翔千空)の中に芽を落とすの。
アマーリアのじゅりちゃんが本当に美しい声で歌うのよ。
故郷を離るる歌の、峰里ちゃんの歌う「園の小百合 撫子 垣根の千草」が特に好きだった。あの綺麗な歌声から紡がれる美しい景色の描写が素敵だった。
カールと歌う時は二人の気持ちが寄り添ってるんだけど、フランツが勝手に一緒に歌う時はちゃんとバラバラなんだよね…。あれ切ない。
学生達が意気揚々と歌う学生歌もどんどん好きになった。
「♪我が行く道は 遥けき彼方」群盗メンバーそれぞれ歌い出しが順番でそれも良かった。
もうね、親子兄弟の情と友情と未来への希望と恋を、宝塚らしさで包んで疾走した青春盛り沢山の内容だったよ…眩しかったよ…(それしか言えない)
群盗を結成する時の希望に満ちた学生達の酒場が、どうにもレミゼのABCカフェを思い出させてそこから既に切なくなった。カールの生まれ年は1759年。群盗の舞台はABCカフェ(1832年)の50年程前ですわ…フランス革命もまだ…
群盗結成時はまだぴよぴよした可愛い顔の坊っちゃんなキキちゃんだけど、一幕最後にもう後戻りは出来ないとなって振り返った目から光が消えた芹香さんはすこぶる格好良かった…三白眼万歳。
カールが故郷にいる頃の純粋でまだキラキラ可愛いお目目から、話が進むにつれ心情の変化と共に目が鋭くなっていくけど中身は真っ直ぐなままなんだよね。
だから最後にストンと「間違った事に、間違った方法でやり返してはいけなかった(ニュアンス)」という選択をするのも納得できた。
仲間と共に理想を求め悩み苦しみ希望(と思っているもの)に突き進んだ挙句、手から溢れ落ちて最後は処刑…という大まかな流れは同じなのに、なんで芹香さんと望海さん(ひかりふる路)はこんなに違うの…?と震えたりしましたが、えぇ、持ち味…。
演出も方向性の違うオタクの小柳先生と生田先生だしね。
オープニング(プロローグではなくオープニングと言いたくなる)も疾走感ある演出でアニメかヒーロー物が始まるのかと。キキちゃんには青春ものを当てたくなるのかしら。
群盗、とにかく舞台上の空間全てが美しかった。
戯曲からそのまま持ってきた熱く美しい言葉や、黒と赤と茶のシンプルな舞台装置も、四季と時間を想像させる照明も、下級生が多くとも内面の充実感を感じさせる活気に溢れた姿も、上級生の空間を埋める美しい立ち姿も、芹香さんの圧倒的な華やかさ・舞台上の熱全てを背負った中心の存在感、全てが美しかった…!
良い舞台を観たなぁ…ってとても満足してるよ。
そしてキキちゃんのビジュアルが常にパーフェクト。
ポスターから最高点叩き出してましたが、貴族姿のコート(アビ・ア・ラ・フランセーズ)に巻毛の付け毛から、短髪の群盗の黒い衣装2着、エピローグの白いシャツに黒パンツ、フィナーレの赤い衣装、髪型含め全てが格好良いし顔もお化粧も綺麗で最高だった…。
ポスターと言えば、あの背景の木立ちはボヘミアの森だったのね。ボヘミアの森へ逃れる時には、群盗は既に決定的な罪を犯した後。ポスターは森へ逃れた後のカールの目なのか…
東京初日のご挨拶の「大阪公演を経て、この、2階席まである広い空間をどう埋めて行くかを課題に頑張って行きたい(ニュアンス)」というご挨拶から、そうだよね、倍近い客席数だもんね、下級生には大きな課題と挑戦だよね…!と、キキちゃんが下級生達を、見守り、鼓舞し、引っ張りあげてお稽古と大阪公演に臨んでた姿が想像できて胸がいっぱいになったよ。カテコで隣の二人(もえこちゃんとじゅりちゃん)と顔を見合わせてると思ったけど、あれは左右に広がる下級生達と目を合わせてたんだな。そうやって皆に目を配ってここまできたんだなと。
そして千秋楽はキキちゃんの悔いは無いとの言葉通り、本人も出演者達も清々しい充実感に満ちた顔で並んでた。今出来るだけ全てやりきった姿に溢れてた。泣いてる子が沢山居てね、後々まで出演者の心に残る舞台になるだろうなと。特に下級生の。上級生にとっても自分のキャリアを振り返った時の機会になるだろうし。
役も役者も「今」を強く感じる公演。宝塚は常に「今」だけど、群盗は特にそれを感じた。
宝塚って舞台を通してジェンヌ自身を観る・愛でる文化も強いと思うんだけど、群盗は役を通して彼女達の命のかがやきを強く感じる。もはや眩しい。下級生が多くもちろん技術的には未熟なところはあるけれども、彼女達の情熱・生き様、「今」を観せてもらったという気持ちが大きい。この「今」って、宝塚が宝塚である要素の大きな一つだと思うんだよ。
そしてそんな情熱迸る舞台のクオリティを支え引っ張っているのが、キキちゃん始めきゃのんさんりんきらさんといった上級生組で。真ん中が大きく腕を広げて立ち安定しているからこそ、若手が伸び伸びと舞台に向かえるという事を体現してたなと。
本当に良い舞台を観せてもらった…。
そして組子の皆さん良い座組と舞台に会えて本当に良かったねと。そして芹香さん、おめでとう。
さらに千秋楽カテコでもえこちゃん音頭のサプライズ劇中台詞を使った掛け声が。
もえこちゃん「おい、待てよ!誓いを忘れたのか?!」
キキちゃん「!???」
全員『次は、ラスベガスに行こうぜ!!』
お口を両手で隠して大笑いするキキちゃん「なんか皆にやにやしてると思ったら〜…!」
キキちゃん宙組でも愛されてるねぇ…!と少しの安心と沢山の嬉しさと。もう丸々全部、役も出演者も青春だったよ。
本当に楽しく濃い1週間でした。
あと東京初日に蘭寿さんと蘭ちゃん麗ちゃんと観劇が被ったのも良い思い出。
私、年に一度は蘭寿さんと観劇が被ってるのよ…うふふ。