ユースケです
今回、ヤマハが発表した「VOCALOID Editor for Cubase NEO」と歌声ライブラリである「VOCALOID 3 Library NEOシリーズ」。NEOって何だ? と思ったが、簡単にいえばWindowsとMacのハイブリッド製品という意味であるようだ。もともと4月に行なわれたヤマハの発表会においてVOCALOID Editor for CubaseのMac版を参考出品しており、この秋に製品化するとアナウンスされていたので、今回の話はそう驚く内容ではなかった。ただ、その詳細や、ライブラリの扱いに関してハッキリしなかった点が明確になったのだ。
ただ、VOCALOID 3はいろいろと複雑なことがあるので、まずは現状を整理しておこう。ご存じの通り、VOCALOIDはVOCALOID 3になってエンジン部分と歌声ライブラリ部分が分離しての発売となった。もう少し正確にいえば、合成エンジン+エディタ機能(GUI)であるVOCALOID 3 Editorが、Megpoid V3や結月ゆかり、KAITO V3といった歌声ライブラリと別売になり、それぞれを購入しないと使うことができない。まあ、歌声ライブラリにはTiny VOCALOID 3 Editorという簡易版が搭載されているので、まったく使えないわけではないが、17小節しか入力できなかったり、和音が扱えないといった多くの制限があるため、事実上VOCALOID 3 Editorが必須だった。システム構成的に見れば合成エンジン、エディタ、歌声ライブラリが連携しながら動作するのというのがVOCALOIDのシステムなのだ。
その合成エンジン+エディタ機能を持つものが、当初はVOCALOID 3 Editorのみであったのだが、今年に入ってから状況が少し変化してきた。まず、ヤマハは1月にVOCALOID Editor for Cubase(通称・ボカキュー)を発売。これはCubase 7にVOCALOID Editor機能を統合してしまうというもので、これがあれば従来のVOCALOID 3 Editorは不要であったのだ。ただし、Windows版のみでの対応であったため、Macでは利用できなかった。
一方、2月にはクリプトン・フューチャー・メディアが、KAITO V3にバンドルする形で「Piapro Studio」というものをリリース。こちらはVSTi(VSTインストゥルメント)として動作するもので、やはりエンジン機能+エディタ機能を装備したものだ。VSTiであるため、Cubaseはもちろん、SONARやStudio One、FL STUDIO……と各種DAWで利用することが可能になったのだ。ただし、こちらもWindows専用であり、Macでは使うことができなかった。
では、それが今回の発表によってどう変わるのか? まずはヤマハ側の対応から見ていこう。
VOCALOIDの開発者である剣持秀紀氏が、登壇して最初に発したのは「大変長らくお持たせいたしました」という言葉。リリース当初からMac版をいずれ出すという旨のことをいっていたが、VOCALOID登場10年となる今年、ようやくそれが実現したのだ。
8月5日に発売される「VOCALOID Editor for Cubase NEO」はCubase7に組み込むアドオンソフトで、WindowsとMacのハイブリッド対応。Windowsで利用する場合は従来のVOCALOID Editor for Cubaseとまったく同じで、これにMac版がバンドルされた格好だ。現行のVOCALOID Editor for Cubaseの扱いがどうなるか、ヤマハ担当者に聞いてみたところ、ハッキリとは答えてくれなかったが、NEOの実売価格が現行製品とほぼ同じ9,800円ということから、おそらく今後はNEOに置き換えられていくものと予想される。
ハイブリッドとはいえ、ライセンスは1つ。従来製品と同様に2週間以上利用するためにはオンラインを使ってのアクティベーションが必要になるが、アクティベーションできるのは片方のみ。もしWindowsを使った後にMacでも使いたいという場合は、Windowsのアクティベーションを解除した後に、Macでアクティベーションするということで実現は可能なようだ。ただし、すでに現行のVOCALOID Editor for Cubaseを持っている人がMacのCubase7で使いたいという場合は、NEOを新たにもう1本買うしかないようだ。いまのところ優待販売なども用意されていない。
発表会のステージ上では、キャプテンミライ氏とヤマハ・インストラクターの青木繁男氏によるMac版のデモが行なわれた。すでにWindows版とまったく同様に動作しており、CubaseとVOCALOIDがシームレスに、有機的に統合されていることをアピールしていた。とくに、ループ再生しながらVOCALOIDの音程や各種パラメータを変更できる点などは、従来のVOCALOID 3 EditorとDAWの組み合わせでは決してできないワザである。
なお、VOCALOID Editor for CubaseのWindows版とMac版には機能的な違いが1点ある。それはWindows版で利用できるJobプラグインがMac版では使えないのだ。もっともこのJobプラグインは基本的にLua言語で書かれたスクリプトなので、プログラムそのものはWindowsのアーキテクチャに依存したものではない。そのため、今後のアップデートでMacにも対応させるとのことだ。ただし、VocaListenerのように外部プログラムを呼び出すタイプのプラグインに関しては、すぐの対応は難しそうだ。
次に、歌声ライブラリについては、どうなるのか? まず、今回の発表会において発売がアナウンスされたのは以下の5製品。
| 製品 | 品番 | 発売日 | 店頭予想価格 |
|---|---|---|---|
| VOCALOID 3 Library VY1V3 NEO | VY1V3NJP | 8月5日 | 9,800円前後 |
| VOCALOID 3 Library Mew NEO | MEWNJP | 9月 | 12,800円前後 |
| VOCALOID 3 Library ZOLA PROJECT NEO | ZOLANJP | 10月 | 12,800円前後 |
| VOCALOID 3 Library 蒼姫ラピス NEO | LAPISNJP | 10月 | 12,800円前後 |
| VOCALOID 3 Library VY2V3 NEO | VY2V3NJP | 11月 | 9,800円前後 |
これらの名前からも想像できるとおり、Windows版においては従来と変わらず、ここにMac版のインストーラも同梱され、WindowsかMacのいずれかで利用できる形になっている。ここで問題になるのは、従来から使っているユーザーへの対応だ。先ほどのVOCALOID Editor for Cubaseと同様に、Macで使うなら歌声ライブラリも新たにNEOを買わなくてはいけないとなると、かなりの出費となりクレームも多くなるかもしれない。しかし、そうした問題を回避するためのうまい方法が提示された。具体的には以下の3ステップを踏むことで、既存のユーザーも、手持ちの歌声ライブラリをMacで使えるようになる。
1.Windowsでアクティベーションを解除
2.Mac用インストーラを入手
3.Macでアクティベート
もう少し具体的にいうと、まずWindowsのDeactivation TOOLでライセンス・アクティベーションを解除して、シリアルコードを初期化する。続いてヤマハのWEBサイトにアクセスし、シリアルコードを入力し、Mac用のインストーラをダウンロードする。そして、Macでインストール後にネット経由でアクティベートすればOKなのだ。ただし、これができるのは、とりあえずはヤマハ製品についてであり、サードパーティー製品については、各社に問い合わせて欲しいとのこと。それに対しクリプトン・フューチャー・メディアは現行のKAITO V3については無償でMac対応させることを発表。またMegpoidなどを発売しているインターネットも、Megpoidシリーズ、がくっぽいどシリーズ、Lily、CULの各ソフトを無償でMacで使えるようにすることを発表している 。その他のメーカーについても、これを追従するのではないかと思われるが、詳細は各社の発表を待つしかなさそうだ。
ちなみにVOCALOID 3では、コンバータを使うことでVOCALOID 2の歌声ライブラリを使うこともできる。では、これら製品もMacで利用することができるのだろうか? このことについての発表はなかったが、基本的には不可であると思われる。というのも単にライブラリのデータをユーザーがコンバートするのではなく、Mac版のVOCALOID 3歌声ライブラリを入手し、インストールした上で、アクティベーションするという工程を踏むので、各社がMac版を出してくれない限りは話にならない。と考えると、そもそもWindowsにもないVOCALOID 3ライブラリがMac用に出て、それを無償で提供するということは考えにくいというわけだ。







