税理士試験とは
来週の火~木(8/2~4)の3日間にかけて
年に一度の税理士試験が行われますね。
昨年は私も受験をしました。
この試験は、いや国家試験というものは
受けた人にしかわからないものがあります。
私も高校受験、大学受験を経験しており、
それなりの結果は出してきたつもりです。
自慢ではなく、大変さの説得力を
上げるために書きますが、
高校は市内の公立高校ではトップと言われていた
ある高校の理数コースに推薦入試で入りました。
大学は大阪大学の工学部に現役で合格出来ました。
その後、エンジニアになり家庭も持っていた私が
35歳から会計事務所という異業種に入り
税理士試験という国家試験に
チャレンジしようとした頃に
その異業種で社会保険労務士という国家資格を
持っていた人に言われた一言が印象的でした。
「国家試験は大学受験とかと全然違うよ」
私がそれなりの学校に合格してること
勉強をそれなりにはこなしてきたことを
分かった上で言ってくれました。
その言葉の意味を後ほど嫌というほど
思い知らされます。
まず大きく違うのが倍率。
税理士試験は合格率が10%強。
10人に1人ほどしか受からない。
最初に通い始めた大原簿記専門学校の先生に
言われた言葉も痛烈でした。
「これは落とすための試験です」
そう、10人受けたら9人が失敗する。
そして年に1回、基本的には1科目勝負のパターン
がほとんどなので純粋に合格率が10%強。
(合格率10%程度のレベルの競争試験を
複数科目受けて受かるのかなり困難)
それに対して大学などは、通常の倍率は3,4倍。
そして複数校受験が出来るので、
どれか受かればいいという状況の人も多い。
なので実質倍率はもっと下がり、
合格率は50%を超えてくる印象です。
そして、入った大学の差で人生が
天地ほど変わることはありませんが、
国家試験は0か1の世界なので、
合否で人生が変わります。
そして、また大きく違うのが大学受験は
自分で難易度(志望校)を変えられます。
大学受験などは、棒高跳びのようなものです。
設定した目標が飛べたらいい。
難しそうなら、それまで勉強していた知識を
生かして他の学校を受けることも出来る。
国家試験は同じ飛ぶでも全然違って、
イメージで言うと
川とか谷を飛び越えるようなものです。
その幅が大体決められていて、
その幅に届かないと落ちます。
ダメな手応えでもそのまま突き進むしか
ないのです。
弁護士が無理だから○○士に
変えようというのもなくはないと思いますが、
それまで勉強した知識は他には
ほとんど生かせないので
ほぼゼロスタートになります。
さらに国家試験は基本的に相対試験であり
日商簿記検定などの検定試験と違って
何点取ったら合格ではなく受験者の約10%強を
合格させるというものなので
受けた後でないとその幅がわからないのです。
そんなひどい試験であるのに
1年に1回しかチャンスがない。
そしてそんな試験を
5科目合格しないと税理士になれない。
受験年数の平均が10年と言われていますが、
これはあきらめなかった人の平均なので
なれずにあきらめた人の数字は反映されません。
何十人と見てはきましたが10年で取れた人は
平均などではなく、かなり順調な方です。
私も35歳という記憶力も衰え、
家庭も持っていて自由な時間がない中で
チャレンジを始めたという言い訳をつけますが
税法大学院の免除を使って9年かかりました。
正社員として残業もあるような仕事と
平行して夜間の大学院に2年間通いながら
税理士試験の受験も並行するという
かなりの無理をしても、その年数を要しました。
そんな試験に合格するために必要なもの
もう一つ、前述の国家試験である社労士の人に
言われた忘れられない言葉です。
「10人に1人に入ろうとするなら、
普通のことをしていたら入れないよ。」
そう、10人に1人しかしていないレベルのことを
実行出来ないといけない。
(追記:10人に1人の変人になるのではありません。ただ変なことをしたら良いのではなく、今の自分の実力に合った正しい努力を、10人集めたとしたらその中で一番自分はやったと言えるようになることです)
昨年に最後の1科目にチャレンジした時は、
今年は絶対に受かるつもりで勉強していました。
誰にも真似できないことをしてやると
思いながらその時の私に必要だと感じた
以下の2つに挑みました。
その1つは、過去問を全て解きました。
昨年は第71回税理士試験でした。
そう、70年分の過去問を解きました。
ただのバカとしか言いようがないかもしれません。
平成以降の直近30年分は2,3回解きました。
当然、模試などの見直し、解き直しは
実施した上でです。
(追記:その前年に、専門学校2校分の答練をやりこんだのに、本試験で手応えが感じられなかった反動も
あります。
さらに過去問の重要性は、同じく前年の息子の
中学受験のサポートで痛感したこともあります。)
→次回、記事にします。
全てのパターンを頭に叩き込み、
対策を練りました。
もう1つは「国税徴収法精解」という
専門家しか読まない本を借りてきました。
本気で買おうか悩みましたが、
図書館で借りれたので延期したりしながら
必要部分をコピーして読みました。
ここは大事なところなのですが、
法律は立法趣旨が大切です。
なぜその法律が出来たのか、
つまりどういう背景、目的で作られたのかを
知ることにより理解が深まり、
記述式の試験にも対応しやすくなりますし、
採点する専門家の人に響く回答を書くことが
出来ると思います。
これは専門学校の教材にもある程度は
書かれているのですが、
それをきっちり理解してくる人は
10人に1人ということはないと思いました。
最低でも2,3人は押さえてきていると
思ったのです。
その程度の学習では差がつかないと考えました。
そして税法というものは会計科目
(簿記論、財務諸表論)と違う毛色のものです。
会計は結局は数字が大切です。
そして会計は法律ではなく、あくまで
「会計基準」で絶対的なものではありません。
それに対して税法は法律なので絶対的なものです。
それをどれだけ理解しているかということを
問われている、と複数年にわたって
勉強するうちに気付くことが出来ました。
そこに気付いてから、習得が速くなりました。
特に国税徴収法という科目は
基本的に記述のみです。
理解が大切です。
他の税法では出題としては
計算が半分ほどあります。
「理論を計算をリンクして覚える」
なんてことを聞いたことがありますが
それは少し違います。
リンクして覚えるという時点で違和感があります。
「計算するためのルールを法律で決めている」
のが税法なのです。
法律が先だと思います。
これに気付かずに計算パターンを
体で覚えて解けるようにして
リンクさせて条文を覚えていた時期がありました。
百歩譲って、記憶力が抜群にいい20代などでは
その力業でも合格は可能でしょう。
ただ、税法を受ける人の大半は
30歳以上だと思います。
税法の根本的な理解がないと、
今の税理士試験には対応できないと思います。
いや、そうしなくても運も相まって
いつかは受かるかもしれません。
ただ、年に1回しかない試験です。
出来るだけ運の要素は排除したくありませんか?
急がない人、他に大切にしたいものがある人は
いつかは受かるという姿勢でもいいと思います。
というのも
10人に1人しかしていないようなことを
しようとすると、周囲にかなり迷惑をかけた
生き方になります(笑)
私には長期的な時間がなかったので、
短期的にいろんなものを犠牲にして時間を作って
合格への道を突き進んでいました。
もう一度言います。
国家試験は0か1の世界なので、
合否で人生が変わります。
あとは何を優先させるかです。
周囲との調和が大切なのか、
自分の夢が大切なのか。
私は税理士となって、
親族の事業を継続させるために
全てを捨てて異業種に飛び込んできたので
選択の余地はありませんでした。
この税理士バッジを得ることが
最優先だったのです。
皆さんも苦難に負けずに
強い意志で突き進んでください!