机の引き出しを整理していて、手のひらほどの黒いUSBが出てきた。容量はたったの1GB。
今の時代、写真を数枚入れただけで満杯になるような小ささだ。
けれど、その中には「卵」が眠っている。2001年に世界を震わせたNIMDAウイルスの原形だ。
もう二十年以上も前のもの。
最新のパソコンやセキュリティソフトには通じない。
でも、オイラはなぜか捨てられずにいる。
それは危険な遺物というより、むしろ“記憶”に近い。
混乱の時代、ネットの脆さを世界に突きつけた象徴。
いまも封じられたまま、USBの奥で沈黙している。
もし誰かに見せれば「危ない」と眉をひそめられるだろう。
でもオイラにとっては、ただの黒い小箱。
売ることもできず、使い道もない。
それでも「万が一のために」と机の片隅に残してしまう。
きっと、この無用の長物に価値を与えるのは、オイラ自身なのだ。
物語にすれば呪いの卵。
記憶にすれば時代の証人。
エッセイにすれば、ただの「なんだかなー」という話になる。