年末年始で商いが薄くなるなか円高懸念が再び強まっている。ドル/円は28日の海外市場で81円後半まで下落し、1カ月半ぶり安値を更新。来年のドルキャリートレード活発化を先取りする動きであるとして、80円半ばまでの下値余地を見込む声が出ている。


 一方、取引が細るなかでの年末特有のフローによる円高であり、トレンドとしては定着しないとの指摘もあり、今後の見方は分かれている。



 JPモルガン・チェース銀行債券為替調査部長の佐々木融氏は、現在の円高について「新年のトレンドを先取りしたもの」との見方を示す。来年以降は、米国景気が緩やかに回復をたどり金融市場が落ち着く一方、米政策金利は低位安定が見込まれ「ドルをファンディング通貨とするドルキャリートレードの条件が整う。幅広いドル売りのなかでドル/円も下落する」という。米景気回復で米長期金利が上昇しても、政策金利が据え置かれればファンディングのベースになる米短期金利は上がらないとの見方だ。低金利政策の長期化という面では円キャリーの可能性もあるが「貿易黒字を背景に輸出企業の買いが恒常的に出る円と比べ、米国は貿易赤字。需給的にドルを売りやすい」と指摘する。



 佐々木氏が過去3年間のドル/円の値動きを検証した結果、年末最後の3営業日は平均2.0%、年明け後の3営業日は平均3.5%変動するという。過去3年間の平均的なレンジが実現した場合、単純計算でドル/円の下値は78円台となる。そのうえで「年末年始の間に、ドルは80.50円程度までの下値余地がある。ただ、過去最安値(79.75円)の更新までは至らないだろう」との予想を示している。



 <年末特有の需給による円高との見方も>



 一方、ある大手銀行のチーフディーラーは「足元のドル売り/円買いはトレンドではなく、年末需給によるもの」との見方を示す。年末の輸出企業の売りに、ドルロングの投げが重なったことで28日の海外市場では81.81円までドルが急落したが「基本的には薄商いのなかで年末需給に振らされた結果。来年の相場を意識したものではない。次の材料は1月7日の米雇用統計で、雇用情勢が回復すれば米金利が上昇しドルのサポートになる。指標をこなしながら徐々に方向感を決めることになる」と話す。



 同ディーラーは「ドル/円が下げるとすれば、ソブリンリスクをにらんだユーロ/円の重さか、下値リスクの出てきたテクニカルを意識して仕掛け売りが出た場合だが、それでも下値は81円割れまで」との方だ。ドル/円の日足チャートはラウンドトップを形成中で上値の重さが目立ってきているが、「11月以来のドル買い戻し地合いのなかでドルを買ってみたが思ったほど上がらなかったためだ。ドルの上値は重いが、かといって新規にドルを売る理由もなく、どこまで下値を試せるかは疑問だ」という。



 クレディ・スイス証券チーフ通貨ストラテジストの深谷幸司氏も、年末年始のドル/円の下値は限られるとの見方だ。「ドル/円の基本レンジは82─84円。海外市場の81.81円は下ヒゲだ」という。



 深谷氏は、ドル/円単体の売り材料は乏しいと指摘。クロス円からの波及についても「ソブリンリスクを抱えるユーロが対円でも売られる可能性もあるが、年末年始はユーロ/円の売り手である本邦輸出企業は不在。逆に個人の取引で人気化している豪ドル/円などの買いが進む可能性もあり、ユーロ/円からのドル/円の売り圧力を和らげそうだ」と述べている。



 深谷氏は、来年についても、米国景気が回復基調をたどり米長期金利が上昇するなかで、ドルが売られることはないとみてドル/円の堅調を予想している。「キャリートレードの基本構図は先進国通貨売り/新興国通貨買い、対新興国通貨でのドル売りは出るだろうが、G3通貨(円・ドル・ユーロ)間で景気回復のトップを走るのは米国。米金利が上昇して日米の長期金利差が拡大するなかで、ドル/円は売れない」という。 


(ロイター)