度数が場所によって変化する「累進屈折力レンズ」

単焦点レンズと違って、レンズメーターのコロナがど真ん中に来る位置が光学”的”な中心ではありません。

 

では、どうやって累進レンズの度数を測ったらいいのか?

レンズのメーカーと製品名は置いておいて、「遠用度数」「加入度数」「設定PD(OCDといった方がいいのかな?)」「プリズム度数」という数値データをレンズメーターで見る方法を解説しようと思います。

 

が、その前に。

 

「度数が違う」ということはそもそもレンズの形が違うという事だからそもそも1枚にはなり得ない。それがくっ付ければ必ず「線」ができるはずです。

しかし、度数の変化を無限に細かくしてあげれば境目はなくなる。端っこにはシワのような構造が残るけど、そこは綺麗に馴染ませてあげれば1枚のレンズになる。

「累進レンズ」とは大雑把に言えばそんな構造のレンズです。

 

 

「度数が違う」ということは「見る場所によって見える大きさが違う」から歪んで見えるし、端っこは度数が狂っているなら「綺麗に見える範囲は中心部分に限定されてしまう」

これが累進レンズで言われる「歪み」と「視界の狭さ」です。

 

累進レンズの進化の目標は「歪みの低減」と「広い視界」なわけですが、この二つはトレードオフの関係にあり視界が広いレンズは歪みが強く、歪みが少ないレンズは周辺がボケる・・・という具合。

 

両者の次元を高め「歪みが少なく、広い視界が得られる」レンズを作るには、レンズの面を細かく分けて場所に応じた度数的なエラーを細かく除去する高度な面設計と、それを実際に形にする加工技術を実現しなければなりません。

 

しかし、処方度数は百人百通りでそれに応じて設計は全部違う。しかも、現実的な価格と現実的な納期で製品化しなければならない。

 

累進レンズ(に限らず眼鏡レンズ)は、瞬間的に理想的な面設計を弾き出すコンピューターと、短時間で高精度に形にする加工機器の爆発的な進化によって10年前とは全くレベルの違うものに変化しています。

なので過去の常識に囚われていてはいけません。

 

累進レンズを実用的なものにするためには正確な乱視(特に軸)の補正が重要です。

なぜならば累進レンズの周辺部分の見えにくさの大きな原因は「非点収差」つまり「場所による乱視の発生」と(場所による頂点間距離の違いに起因する)パワーエラーであり、簡単に言えばそれを打ち消す乱視度数を(第3眼位における回旋(リスティングの法則)も考慮されて)場所によって細かく変化させることで視界の広さを実現しようとしているので、軸の狂いは周辺部分の見え方の質の低下、つまり「視界の狭さ」につながってしまいます。

 

加入度数によって調節を助けるということは近見の輻輳にも影響がでるわけですが、視機能の特性によってはプリズムとの相性が良く、プリズムを組み込むことで初めて累進レンズが装用可能になる例も少なくありません。

現在のレンズ設計はプリズム度数の影響も考慮されています。

 

つまり、累進レンズは「単体のレンズ」としてみたら「収差の塊」なのですが、それが目に対して正しい位置にセットされた時に

生きるように作られているわけです。

 

結局、何が言いたいかと言えば、レンズメーターで測定される度数というのは目に対して処方度数がきちんと作用するように計算された補正込みの度数である。というとなのです。