フランスを代表する二世代名女優の競演という割には、火花が散る演技合戦というより
二人とも演技を超えて、現実に実在しそうにナチュラルすぎて流れてしまう。
男性脳からは理解しにくい正反対の母と娘という関係性もあり、どうにもしっくりこない。
物語の流れにチューニングできず、取り残されていく感じがあり、睡魔との闘いでもあった。
難解な物語運びや奇を衒った演出があるわけではないのに、どこか居心地が悪く、
ひょっとして女性ならばと思えば、監督、脚本が男性というのに驚いた。
この種の映画は言葉として感想をまとめにくい。
ネットにあった監督のインタビューを読み、ようやく何となく繋がった。
ます監督自身が母、祖母、姉妹に囲まれた女系家族であり、
実際に誕生時に助産婦に救われた経験があるということ。
女性監督が描く女性は時として、同性故に容赦なく、残酷なまでに生々しいことがある。
一方通常の男性監督は女性を夢想的に美化する傾向があり、単なる妄想キャラクターと化する。
男性監督でありながら、女性を身近に育ち、リアリズムが備わっている。
だから女性をちゃんと実在する人物として、生々しく描くことができる。
二人のカトリーヌが演じるの対照的な人物を明確に描き分けている。
酒とギャンブルが大好きで自由奔放だけど、身勝手な孤独なドヌーヴと
真面目で質素だけど、助産婦として息子を育てあげたフロを巧みに対比させる。
正反対の性格で、30年も別に暮らしていて突然の再会。
ここで血の繋がらない親子、血縁ではない疑似的な母と娘という設定が活きてくる。
二人に共通するのは元の夫であり、実父が不在の絆となっている。
過去へのわだかまりがあり、反発する娘が徐々に病魔に侵されている義母と心を通わせる。
後半で、ある小道具を使って、不在の人物を見事に浮かび上がらせる。
またクレジットで助産婦への献辞があるのでも明らかなように、
監督自身が助産婦という職業に対する敬意を抱いている。
出産シーンも実際の現場に俳優が立ち会ってリアルに撮影したらしい。
監督自身の言葉によると、新しい生命の誕生を担う助産婦と病魔は生と死の対比らしい。
これで物語の構造がようやく理解できた。
監督が作品について多くを語るべきでないという意見もあるだろうが、
時としてその言葉によって作品の姿がはっきりと見えてくることもあるのだ。

偏愛度合★★★