前評判で往年のハリウッドコメディ、ワイルダーやルビッチとか言われると期待でいっぱい。
とんだ肩透かしってこのことだろう。
三谷幸喜流に言えば邦画にも「シットコム」の傑作がついに登場かと、
期待が大きかっただけに、奈落の底へと落ちてしまい、しばし立ち上がれず、即死。
元となった舞台での演出や脚本との比較はできないけど(基本舞台って苦手)、
舞台と同じ西田征史が監督と映画脚本を担当している。キャストも一部重複。
映画と舞台は俳優がいて、演技があり、脚本と演出があり、
物語を動かすという点では似ているようで、やはり根本的な作法が異なる。
抜群に面白い舞台を映画化しても必ずしも抜群に面白い映画にはならない。
スポーツ中継のように舞台を複数のカメラを記録し、スイッチング(切り替え編集)して、
そのまま中継(最近は映画擬きの舞台中継を劇場公開している)するのなら兎も角、
映画は映画としての基礎となる文法があるのだ。
正直そのセンスの欠落した、余りにも陳腐な演出にはうんざり。
中途半端なカメラの動きやアングル、カット割り、
今時ここぞとスローモーション撮影など使うなど、陳腐にも程がある。
三谷幸喜は苦手だけど、舞台と映画は別物として、映画なりの醍醐味が感じられる演出を試みる。
成功しているか、どうかは兎も角、少なくともその誠意は感じられる。
この監督にはそれは全くない。
それなりに劇達者な俳優を揃え、演技させ、形通りにカメラで記録しているだけ。
個人的にはナチュラルでない、舞台的なオーバーアクトが苦手ということもあるけど、
達者だけど、仰々しい芝居に頼り切っりの凡庸な演出には映画的な魅力は感じない。
脚本自体がひどい出来具合というわけではなく、やややり過ぎ感はあっても、
キャラクター描写を積み上げて、伏線を張り、きっちり回収して、物語を動かしている。
それを映画化ならではの切り口で見せるという意気込みが感じられないだけ。
監督作品としては「小野寺の弟・小野寺の姉」に続く作品。
同じく当人脚本の舞台が元で、左程好きな作品ではないが、不思議と映画的な違和感はない。
今回のこの舞台中継臭い違和感は一体何なんだろう?
冒頭に挙げた巨匠は基本引き算で多くを語らずに、最大限の笑いを引き出す手法に対して、
その正反対の舞台の過剰さをそのまま引きずっている気がする。
単なる私見に過ぎないけど、くどさがその要因の様な気がする。
映画って個人的なツボ次第なので、正解なんてない。

唯一の救いは登場は僅かだけど、高畑充希の器用さと可愛さぐらいかな。

偏愛度合★★