丁度2時間の尺なのに体感時間は恐ろしく長い。
2時間42分の「ブレードランナー2049」よりも長く感じる。
映画の尺って、体感次第で伸び縮みするから不思議なものだ。
といっても無駄なカットが多いとか、演出の手際が悪いという感じではない。
ひたすら晩年のロダンのアトリエでの創作風景を描くだけ。
役柄になり切ったヴァンサン・ランドンの演技と巧みな移動カメラでの長回しなどを駆使して、
肖像を完成させてゆく現場に立ち会ったようなドキュメンタリータッチの臨場感はあるけど、
明確な起承転結のある物語はない。
説明や台詞も最小限でアトリエ内の室内劇が中心で張り詰めた緊張感こそあるものの、
細部描写は執拗なまでに明確でも、全体像の流れがゆるく、結果淡々とした印象が続く。
どんなに部分部分がリアルであっても、結局のところ、人は物語を求める。
ロダンのアーティストとして狂気にも通じる徹底した作品へのこだわり、の反面出入りする弟子や
モデル女性と片っ端から関係を持つ節操のなささなど、感情移入しにくいキャラクターでもある。
何度も映画化されたカミーユ・クローデルとの長年にわたる執着と反発も正直言って重たい。
創作活動に没頭するロダンの姿を観客をつき放して延々見せられるのは結構きついかな。
着物に髪を結った変な日本人モデルやラストの箱根美術館での描写は完全に蛇足で意図不明。

偏愛度合★★★