ソリッドシチュエーションスリラーの走りであり、低予算ながらツイストの効かせた展開とオチで
存分に楽しめた「ソウ」第一作。その筋のジャンル映画の流れを決定づけたスタッフを産んだ。
でも柳の下の泥鰌を狙い過ぎて、続編を追う毎に、繰り返され、希釈され、筋立てのほころびが目立ち、
出来具合も散々で自分ですら途中からフォローをやめた。
今回も無視するつもりだったけど、監督がスピエリッグ兄弟と知り、久々に劇場へ。
何といっても超偏愛作「プレデスティネーション」 ☟ の監督なのだ。
物語上、仕掛けたトリックという結論から逆算して、プロット展開をひろげるというスタイルは
てっきり監督兄弟の脚本かと思えば、別だったけど、人選は間違っていない。
ラストに用意されたオチでのひっくり返し方やそれまで張り巡らせた伏線の回収など、
その巧みなストーリーテリング手法は両作に共通するのだ。
これまでの物語で既に死んだはずの男を続編で生き返らせる手法は、
ヒット作の続きという興行上の要請でよくあることだけど、一応矛盾はない。
でも結果は惜しいけど並かな。
自らの罪を贖うために生死を賭けたゲームに参加させられる5人の男女。
お馴染みの手の込んだ装置で時間がカウントダウンされる中、活路を見出すというゲーム。
個々が密かに抱える割とミニマムな罪に対して、
わざわざ不条理なまでに面倒な臭い装置を用意して、実践するという何ともマメなジグソウ。
これはシリーズのお決まりであり、歌舞伎の見え切りと同様に、
次はどんな新しい仕掛けが登場するのかを眺めていれば良い。
多少はグロいシーンもあるけど、ゴア度はそれほど高くない。
今作はそれと並行して、犯人を追う警察側の視点をカットバックさせて挟み込まれるのが目新しい。
悪徳刑事と検視医、その助手である女性検視官という誰もが怪しげな三者の視点が描かれる。
登場する俳優陣は全て無名というか、見たことない人ばかりなので、
俳優の格で誰が生き残るかは予想できない。
やがて、物語はこのふたつが見事に交錯するところに、オチが用意されている。
別の作品で既視感があり、とりわけ珍しいものではないけど、
そのちゃぶ台ひっくり返しと伏線回収にはまあまあ楽しめるけどね。
しかし、またしてもシリーズ化するつもりなのか?
偏愛度合★★★