時として行き当ったりばったり力って凄いんだ。
勿論一本の映画の物語としてきちんと計算された構成で伏線と回収を実践する作品も大好きだけど、
細部は破綻しまくっていても、力技で一気に最後まで押し切る作品も悪くない。
物語のプロットが本当に行き当たりばったりなのだ。
登場人物は兄弟。
弟はちょっと知恵遅れで、カウンセリングへと通っていることが冒頭で提示される。
二人は金が欲しいから銀行強盗。
でもろくすっぽ計画もせずに古典的な窓口へ紙を差し出すという手段で実行して、
何とか金をせしめて、逃亡したものの、金は盗難防止のペンキまみれで、
挙句の果てに職質で思わず逃げた弟が身柄確保され、兄もまた逃亡犯となってしまう。
捜査から逃げながらも、弟の保釈金を確保するためにジェニファー・ジェイソン・リーに泣きつき、騙す。
彼女はゲスト出演程度。
ところが今度は既に病院へと移送された弟を逃がすために、
奔走するという具合にどんどん話が逸脱していく。
時間的には半日から一日程度の間なのに、兄の行動目的が次々と変わって、
金が欲しいがいつの間にか弟を取り返すにすり替わり転じていく。
街の光を強調したようなラフ映像でひたすらアッパーな音楽を流して、ノリだけで突っ切る。
元々何も考えていない主人公なので、展開を追い、先読みするというよりも、
夫を介護する老人の娘、遊園地の深夜警備員、ドラッグの密売人と
次から次へと唐突に現れる登場人物と無軌道な展開を共に体験するという感じだ。
途中参加の人物の逸話が唐突に挿入されたりと、無茶苦茶な構成。
疾走の一晩を終え、夜が明けて、落ち着くべき展開へと繋がる。
本当に全編パワーだけで押し切る。
だけど共に一晩の夜遊びを終えて、程よい疲れと、酩酊感が漂うような印象が残る。
ラストは再び病院での弟のグループカウンセリングの姿が描かれ、
弟に挟まれた兄の意味のない無暗な疾走がより浮きだって見える。

偏愛度合★★★