酔っ払いダメウーマンがシンクロする巨大な怪獣とロボットが戦うというボンクラ映画マニアならば
無条件でアガル設定ながら、観賞中どうにも居心地の悪い印象がつきまとった。
よくよく考えると、これはフェミニズム視点の怪獣映画なのだ。
確かに他ならぬアン・ハサウェイが演じるヒロインのダメさ加減は、キュートで可愛いんだけど、
このダメさを裏読みすると「誰が彼女をダメにしたのか?」という問いかけに突き当たり、
男性的には背筋の凍る現実に突き当たる。
作品の宣伝的にはダメウーマンであることを強調しているけど、
実際にはその陰にいるのがダメ男、というより女性をダメにする男たちなのだ。
てっきりフェミニズムを唱える女性監督かと思えば、
写真を見るとむさ苦しいひげ面40歳のオッサンがいた。ああああああ………。
主人公はかつてNYで彼と同棲するネットライターだった。
ところが書いた記事の言葉尻を捕らえられ、炎上してリストラ、現在は無職。
その内容は具体的には描かれないが、男権的な嫉妬や上げ足取りであることは想像できる。
当然ディズニー映画のヒロインながら、幅広く作品を選び、真面目にキャリアを重ね、
ようやくオスカー助演女優賞を得た途端にネットで意識高い系としてバッシングされたハサウェイの
現実とも重ね合わせるできる。今作で彼女は製作総指揮にも名を連ねているのだ。
彼氏は高級マンションに住むイケメンだけど、無職で酒浸りの彼女をあっさりと追いだす。
その癖、故郷の彼女に嫉妬して、未練がましく追いかけてきて復縁を迫るというどうしようもないカス男。
更には帰郷した彼女の同級生であり、バーを経営する。
職のない彼女を雇ったり、親切な友人を気取りながらも、裏でストーカー紛いの行為を繰り返し、
挙句彼女がバーに出入りする別の男へと走った途端に嫉妬でモラハラ行為全開というカス男。
彼女がダメなのではなく、彼女をダメにする野郎が世界には存在して、
それが社会通例として機能しているのだ。
自分自身、決してマチズモな男権主義者ではなく、どちらかといえば女性的なものを好みながらも、
決して男性としての呪縛からは逃れられない。
無意識のうちに女性へと男性性を押し付けているのだ。
だから鑑賞中ずっと居心地が悪く、そのことに気が付いて背筋が凍ったのだ。
彼女のオルターエゴたる巨大怪獣が地球の裏側ソウルに現れる。
怪獣にシンクロしながらも頭をポリポリと掻くアン・ハサウェイが何ともキュート。
心理学的には髪をいじることは、無意識な緊張や退屈、嫌悪感が秘められているとされているらしい。
ソウルから世界中に同時配信される怪獣の姿。
ネットで追放された彼女が、ネットを通じて人生の再起を図るのが面白い。
酔っぱらっての行為ながら、怪獣シンクロによってなされた破壊を悔やみ反省する彼女に対して、
バー野郎が嫉妬心から同じく男権のオルターエゴたる巨大ロボットとシンクロして登場する。
何故かソウルに繋がっているけど、
田舎町の公園砂場を舞台に女性と女性を抑圧する男性性とのバトルとなるのだ。
そのことに気が付くと、彼女の一連の行動やラストシーンの持つ意味が異なって感じた。
居心地を見出したのだ。ざまあみろという痛快感すら感じたのだ。
蛇足ながら、目のデカさといいバランス感のおかしい顔つきのアン・ハサウェイの
見事な酔っ払いぶりは可愛いすぎる。いやいや、しつこいけど。
偏愛度合★★★★