「なんや漫画みたいな話やな」と思っていたら、実際に原作はコミック(グラフックノベル)だった。
てっきりボリショイバレイ団を目指す天才バレエ少女の自伝をドキュメンタリータッチで
描く作品かなと思っていたけど、勝手が違った。「エースをねらえ」のバレエ版みたいなものか。
本当に少女漫画のような展開だけがご都合で先行して、ディテールのリアリティがスカスカ。
ほぼ美少女のビジュアル優先。もっとも中身も知らずにそれに惹かれて観た自分もスカスカだけど。
ヒロインは貧しい家庭の生まれながらも、バレエの才能に恵まれ、
ボリショイバレエ団を目指してひたすら努力する日々を過ごす。
ようやく夢がかない入団目前となった時、バレエ学校の同窓のイケメンフランス青年に
恋をして、ボリショイ捨てて、ふらふらと渡仏。
あんなにも貧しい暮らしだったのに渡仏の費用や査証がどうなっているとか細部は一切無視。
男の部屋に同棲しながら南フランスのコンテンポラリーダンスカンパニーへ入団。
そこでは踊るあたらなる師ジュリエット・ビノッシュに出会う。
あっけなくけがで挫折、恋人とも嫉妬が原因で別離とこれまた絵にかいたような少女漫画展開。
このあたりから真面目に物語を追うのが面倒くさくなってくる。
行き当たりばったりの彼女の行動にはついていけない。
確かに演じるのが映画初主演ながら、実際に一流ダンサーであるアナスタシア・シュフツォワの
踊りは魅力的なので、かろうじて物語が漫画でも体裁は保たれている。
ダンスにおけるクラシックとコンテンポラリーの区別も正確に理解していない門外漢なので怪しいけど。
自分探しではないけど、南フランスを飛び出し、無銭で街中を彷徨いながら、
路上生活を送ったり、父親の訃報などなど、とってつけた試練が待ち受けている。
でもちゃんと最後にはダンスのパートナーとなる男性(もちろんイケメン)に出会う。
ジュリエット・ビノッシュはあれ以来登場しない。いったい?
基本プロットはあっても生々しさを感じさせる世界観が構築されていないので、あちらこちらに隙間だらけ。
隙間風に煽られても、感情移入はしにくい。
華麗なダンスを見るしかないけど、そっちはあまり興味がないので仕方がない。
全くもって「なんじゃこりゃ~!」なダンス映画だった。

偏愛度合★★★