シリーズ第一作「死霊館」は楽しめた。
超常現象研究家でありウォーレン夫妻がいい味出していて、
特に妻役を演じるヴェラ・ファーミガが結構好みなのだ。
ケイト・ブランシェットやティルダ・スウィントンにも通じる細面で血の薄そうなタイプの美人。
夫婦のコンビネーションで死霊と対決するのが、目新しかった。
その夫妻の家にある結界で封印された部屋に仕舞われた忌まわしき物の数々の中でも、
最恐なのが死霊人形アナベル人形なのだ。
その誕生の秘密がついに明かされるのかと思えば、
2014年に既に前日譚「アナベル死霊館の人形」というのがあった。完全に忘れていた。
この種のジャンル映画は消費され、劇場を出た瞬間から忘れ去られるのが常なので仕方がないけど。
とうことで前日譚の更に前日譚というネタ切れ感も感じられる強引なシリーズ化にちょっとうんざり。
でも動画サイトにアップした自主製作の短編で名を馳せ、
長編化「ライト/オフ」に抜擢されたというデビッド・F・サンドバーグが監督をということでk微かに期待。
でも残念ながら、全然怖くない。
ここでも繰り返しているのが、電気が消え暗闇になったら悪魔が近づいているという同じパターン。
おいおい、監督の持ちネタはこれしかないのかよ?
物語は文字通り人形の誕生、その製造現場から始まる。
昔気質の手作りにこだわる人形職人とその妻と娘が第一幕の登場人物。
不慮の事故で娘を交通事故で失った夫妻。深い悲しみに明け暮れ数年の時が流れる。
そして第二幕はその夫妻の家に修道女が行き先のない孤児の少女6人を連れて泊まり込みに来る。
幽霊屋敷譚でお馴染みの立入禁止の封印された部屋、怪しげな物音、不穏な人影と次々と異変が起こる。
少女のひとりのが何者かに憑かれ、支配され、言動が異常となってくる。
もう展開自体が定石過ぎて目新しさがない。そこに自家薬籠中の電気のオンオフを盛り込む。
全然盛り上がらない。
やがて登場人物の口から、異変の原因を台詞で説明される。
いかにも説明的な台詞ってところが禁じ手でまたしてもテンションが下がる。
古くは「猿の手」と同様の、死んだ子供を蘇らせるために、忌まわしき者へと近づいたために、
予想外に娘とは別の異物(キリスト教徒なので明確に悪魔か悪霊)となって帰ってくる。
その惨劇から12年が経過しているが、その間は平穏が維持されていたらしい。
そこに突如巻き込まれるのが寄宿している少女たち。
闇に潜む姿、影、音と脅かす手法もお馴染み。
そうなのだ。実はホラーとコメディは同類なのだ。
極限状態の恐怖がどうしようもなく、戸惑いながら薄笑いへと繋がるのと同じく、恐怖と笑いは似ている。
コメディ劇ならは、決まりのギャクが展開される形式性とそのタイミングやじらし方に演じ手の技がある。
ホラーも同様に、入ってはいけない場所へとわざわざ踏み込む、開けてはいけないものを開ける、
わざわざ逃げ道の立たれる二階へと逃げるなどの形式があり、それを巧みに繋いで、観客を驚かせる。
お決まりのネタこそホラーとコメディの本質だ。
ハッキリとは見せない気配で怖がらせている分には良いのだが、後半は悪魔降(悪霊)降臨とばかりに、
単なる怪獣映画か動物パニック映画となってしまうの残念。
存在とその背景が明かになると恐怖というより、単なるワッ!とびっくりさせるショッカーに過ぎない。
個人的にはデビッド・F・サンドバーグの短編は一発ネタで楽しめる傑作だろうけど、
それを長編にするために背景や登場人物のディテールを水増しして、結果薄っぺらいと感じた。
舞台での一発ギャクなら笑えるけど、それを繰り返し、背景説明されると冷めるだけなのと同じ。
今回もまた同じ轍へとスタックしてしまった。
不謹慎な言い方だけど、生贄となる少女を6人(年齢も大人びた子から、まだまだ少女まで幅がある)
も揃えているのに、死亡率は低く、ゴア度数も低い。
犠牲はあれども、大方はあっさりと逃げのびて、神父の除霊で完了って、都合よすぎないか?
このシリーズももはや断末摩か?

偏愛度合★★