シリーズものの場合、どうして間隔が空いてしまうと前の作品を忘れてしまう。
ざっくりと物語は振り返ったものの、出来れば事前にDVDで予習を済ませ、
シリーズを通して一気に観るべきなんだろうな。
初代「猿の惑星」へと向かう三部作とは聞いていたので、
一応今作が最後のはずだけど、確かに段々と近づいているけどまだミッシングリンクが残っている。
TVの洋画劇場で初めて観て、衝撃を受けた世代。
くどいくらいにシリーズ化され、段々と物語上の矛盾点ややっつけ仕事も目立ってきたけど、
やはり思い入れの多い作品だけど、吹き替えばかりで、オリジナル言語版は相当後で観た。
殆ど無かったことにされているティム・バートン版は置いておいて、
この三作は全体的にダークなトーンで猿側の視点で共感できるつくりになっている。
今作は監督曰くクリント・イーストウッド「アウトロー」を参考にした断言するくらい西部劇風味が濃厚。
それも正統派ではなく、血生臭い復讐劇が繰り広げられるマカロニウエスタンの流れの西部劇。
戦時に、敵側兵士に妻と息子を殺された男の復讐譚という基本設定が同じ。
シリーズ前作からの続きで、猿の知能を高めたウイルスにより、滅亡の危機を迎えている人類の
最後足掻きともいうべき紛争が続く近未来。
都市は壊滅し、残されたわずかな者たちが結束して猿へ対抗する。
虚しいまでにお互いの復讐と復讐の掛け合いしかない。試みられた共存は前作で争いへと転じた。
そこに「地獄の黙示録」というトリッキーな引用を企てる。
先日の新作「キングコング」といい、
丁度ひと回りして若手監督のリアルタイムで影響を受けた作品なのだろう。
カーツそのままの人物造形な大佐といい、劇中の地下道に書かれた落書きが
「Ape Callyplypse Now」にヘリコプターでの敵陣襲撃などわかりやすすぎる監督の偏愛感。
ウディ・ハレルソン演じる大佐は猿の撲滅を企てる軍隊のリーダーだ。
剃髪された頭と奇妙なロジックをモゴモゴと喋る演技でマーロン・ブランド風味を巧みに再現する。
基地の建物の上から軍団を見下ろし、兵隊たちががまるでナチスのように動きを揃え、軍団を称える。
こちらは「マッドマックス怒りのデスロード」のイモータル・ジョーの影響か?
こちら王国もまた引用ネタと同じく崩壊していくのだが、その様子が滅びゆく者の物悲しさを訴える。
国旗や国歌(星条旗よ永遠なれ)の皮肉な使用が現在のアメリカへの揶揄が効いている。
断末摩に足掻く狂った集団にしか見えない人間側に対して、
最初から観客視点は明らかに猿側でシーザーの言動と同調する。
妻と子供を襲撃で殺された以降の彼の言動はクリント・イーストウッド化する。
常に眉にしわを寄せ、暗い表情で多く語らず、執拗に相手を追う。
そこに同行する腹心の猿たちとの復讐の旅路となる。
それは雪の山中の行軍や、過酷な旅だ。
ウイルスにより口のきけない人間という設定、ノバという少女や懐かしいコーネリアスという名の登場で
初代「猿の惑星」へのリンクを巧みに提示するあたりはファンとしては嬉しい限り。
ラストの湖も宇宙船の不時着場所を意図しているのか?
アンディ・サーキスの熱演も見事。
モーションキャプチャーというテクノロジーは俳優を肉体と言う呪縛から解放したともいえるだろう。
老若男女問わず、動物、機械など何モノにでもなれるという特殊メイクや衣装では限界がある演技の
縛りを全て取り除いた新たな自由度が生まれた。
初代と同一世界観の作品とすれば、最後のミッシングリンクは自由の女神で示される核戦争だ。
続けてまだシリーズを続けるつもりなのか?
このシリーズのクオリティ維持度ならば、ちょっと観てみたい気もするけど。

偏愛度合★★★