北野武監督らしい潔いというか、力づくの幕引きだ。
本人もインタビューで答えているが、「仁義なき戦い」の様に、
終わりがない延々続くシリーズと化すのが嫌だったみたい。
ないのは仁義じゃなくて、終わり。映画会社の飽くことなき利益という儲け主義には限りない。
まぁ商売だから、余り前だけど。
確かに海外での評価は絶大で、評論家や一部熱狂的ファンの支持があっても、
興業収入的には然程ふるわない北野作品の中では稼ぎ頭のシリーズだけに、
本人はもう付き合う気はないにしても、普通ならば製作会社は懲りないだろう。
実際、祝日の午後の回だったけど、大きめのシネコンの劇場の8割がたは埋まっていて、
かつての東映ヤクザ映画好きの老人風とか老婦人が娘と家族で観るなど、幅広い層のファンがいた。
それを一気に断ち切るがごとき「最終章」はある意味あっぱれ。
しかも最高傑作との声も高い「ソナチネ」を露骨に引用して、
「ほら、おめえたちが観たかったのはコレだろ。もう、オイラはおしめえぇにしとくぜ」
とばかりにシリーズを締めくくる。
まずは「バカ野郎」「この野郎」と銃弾の代わりに罵声が飛び交う。言葉もまた武器だ。
予告編で丸々見せている銃撃シーンまで、ひたすら繰り返される罵声をバックに、
面倒臭い派閥間の人間関係をどうでもいいんだけど、整理し中盤まで待つしかない。
現実の会社内での派閥争いや上下関係、先代社長の継承者などの権力争いを
モチーフしにて、そこに銃を持たせたと監督自身がインタビューで答えているが、
まさしく魑魅魍魎が跋扈するマウンティング全開の社内戦争だ。
これらの主流組織からのハグレ者として、
僅かな部下と共に済州島でのんびりと釣り糸を垂れているのが大友一派。
海のバックに大森南朋と減らず口をたたき合う冒頭から「ソナチネ」感。
やがて花菱会の幹部とのトラブルから、抗争へと発展していく。
表裏での駆け引き、餌をちらつかせての引き込み、裏切り、切り捨て、圧力に
影の韓国系フィクサーや警察権力が絡み、一触即発の混乱状況となる。
でも相変わらず描写は淡々としている。
言葉は乱暴でも、演出自体は決して激昂しない、常にクールで客観的な視点で淡々と成り行きを追う。
北野監督お馴染みの編集リズムで盛り上がりそうで、盛り上がらない。
このどこか冷めたダウナーな加減が心地よいのだ。
そして中盤から最終章へと、ここぞとばかりにフィナーレの花火を打ち上げる。
ホテル宴会場への軍用マシンガンを腰だめに、見境なしに抹殺する銃撃戦が最大の見せ場だろう。
一連の関係者を始末して、仁義を通しをた後のラストシーン。
再び「ソナチネ」を引用して、あっさりと「これでおしまい」とばかりにあざ笑うかのようにピリオドを打つ。
何処までも頭の切れる北野監督だ。


偏愛度合★★★