映画は女優を愛でるものである。
その一点のみでは反論はないのだけれども、落としどころがない不可解な映画だ。
そもそもが、「Planetarium」という抽象的なタイトルでバスタブで裸(上半身のみだけど)で向かい合う
ナタリー・ポートマンとリリー・ローズ・デップのスティルを配したポスターだけで、
偏愛する二大女優への妄想に駆られて、わざわざ普段は買わないムビチケまで購入したのだ。
更には

「人の心を狂わすこの姉妹は、高名なスピリチュアリストなのか、それとも世紀の詐欺師なのか」

と煽るキャッチコピーこそ、皮肉にも映画そのもののを表す言葉なのだ。
ちなみにこのチラシやポスターのシーンは僅か数秒程度で、実は本編自体の展開とは何の関係もなく、
このワンカットを切っても全く影響がないレベルなのだ。
そう、映画自体がそんな詐欺師感に満ちている。
舞台は30年代のパリ。
アメリカから来たスピリチュアリスト(霊媒師)姉妹として、降霊術のショーの舞台に立つ。
配役が絶妙、というか映画全体で二人しか見るべきところは少ないのだけれど。
霊感があるとされているのは妹のリリー・ローズ・デップ。
女優としては未知数だけど、あの父母から引き継いだ容姿と透明感はぴったり。
マネージャーとして仕切るのが野心家の姉のナタリー・ポートマンだ。
実生活でも子役出身ながら身を崩すことなく、一流大卒でオスカー狙いを「ブラックスワン」で
達成して以降も、その伴侶や作品選びなど、留まることない強かな野心がありありとうかがえる女優だ。
今作も初監督作品が評価された女性監督を起用するなど、策士としての片鱗がうかがえる。
ここまで常時意識が高いと嫉妬や嫌味を越えて、清々しいくらいの真っ直ぐな生き様だ。
でも、二人が30年代のクラシックな衣装で動く姿には溜息が出る美しさだ。
作品を覆う詐欺師感とは、二人のキャラクターによるのではなく、
映画作品(視点)として、最も肝心の心霊現象そのものへの否定も肯定もしない中途半端さにある。
それらしい舞台を見せながらも、本物のスピリチュアリストなのか、詐欺師なのかを明確にしないまま、
ユダヤ人富豪で映画プロデューサーの怪しげな男の登場で物語は逸脱していく。
彼は映像で降霊現場を記録すると意気込み、作品自体が映画制作現場の裏話へと転調していく。
動画フィルム(モーションピクチャー)で現実を越えた現実を記録するという映画そのものへの
メタな言及とも取れるけど、大金をはたいて撮影した作品を周囲はあっさりと実証不可能なものと
詐欺扱いのままあっさりと終焉する。物語が取集つかぬままに終わる。
観客もまた置いてけぼりで、あっさりとその後二人の顛末のみが語られる。
もっと見えない世界を見せて欲しかった。

偏愛度合★★★