神は細部に宿るという通り、ディティールの積み重ねが物語を動かす。
特にミステリーというジャンル映画なわけで、細部での描写こそが、
全体の伏線となり、どうにもそこの詰めが甘いのが目立つ。
原作は未読なので、原作自体の問題なのか、映画化の際の脚本の粗なのかは不明。
古いノートに記された書き手の不明な文章の事実を探るという叙述トリック自体は映画化が困難。
文章ならば勝手に読者がそれぞれ書かれた場面を勝手に想像し、曖昧なままで済ませられるが、
映画化の場合はそれを映像化しなければならないので、具体的、限定的な像を提示せざる得ない。
想像力の隙間が少なくなる。
そこで細部の整合性の粗い描写があり、物語自体に乗り切れない。
まあ役者は文句なし。
吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチの三者も役柄通りではまっていて想定内。
佐津川愛美や清野菜名などの脇も上手く配している。
ちなみにリストカッター三人娘という酷使具合。割と生々しくゴアに見せるので痛い。
ほころびは木村多江の役柄に起因する。
彼女の演技力ということではない。いつのも薄幸オーラは全開である。
ネタバレになるが、過去と現在を繋ぐある人物でありながらも、
その容姿の差は整形手術というご都合主義、また後半の佳境で単身ヤクザの事務所に素手で乗り込み、
手負いなしに全員をあっさり抹殺するなど余りにもいい加減なキャラクター設定が続く。
また重要な小道具であるはずの青酸カリの瓶のぞんざいな扱い、
物語の展開に対して、時折一切描かれない出所不明の金が見え隠れするなど矛盾が多い。
身体を売って生活した女性が、
結婚後夫婦と男の子の慎ましく貧しい暮らしからは捻出できそうもないのだ。
重箱の隅を楊枝でほじくる必要はなくても、その細部のリアリティで人は大きな嘘を信じるのだ。
結果、どうにも乗り切れず。


偏愛度合★★