いい加減にネタが被り過ぎ。
多分監督自身も自覚しており、これが最後だろうけど、
主役を変えても脇を固めるのが常連ばかりで、
「モテキ」「バクマン。」などのこれまでの作品の既視感だらけ。
いつも同じ作風で一貫して、同じことを撮り続ける大家もいるけど、その域に達するにはまだ早い。
もっと大根監督の様々なジャンルでの異なった作風での冒険を楽しみたいのが本音。
とりあえず今後リリー・フランキーと新井浩文の使用と雑誌編集部の登場は禁止すべきだろう。
全体的に小ネタの寄せ集めで、細部細部では結構楽しめるのだけれども、物語全体として、
奥田民生になりたいボーイが全ての男を狂わせるファムファタールと出会うことによって、
大人に成長するビルドゥングスロマンとしては中途半端。
妻夫木聡が童顔としっかりとした演技力でオーラを消した情けないモラトリアム青年を演じ、
プロット的には物語の最初と最後をオーバーラップさせて、
一応成長しているようにはしているけど、その過程や共感性、説得力はちょっと弱いかな。
原作由来かも知れないが、ちょっと狂った恋バナや業界裏話などの一発ネタを楽しむべき作品。
変人フリーライター役のリリー・フランキーも流石に露出が増え、独壇場だったはずの
演技規格外の素人暴走もどうやら計算ずくらしきワンパターンが見え隠れして新鮮味は薄れた。
安藤サクラのアッパーとダウナーの間を急降下する緩急演技も確かに面白いんだけど、
「ゆとりですがなにか」類似品な感じもある。
新井浩文にいたっては「モテキ」の役柄、演技そのままだし、
松尾スズキや天海祐希のトリッキーなキャラクターも同じく想定内。
やっぱり水原希子の映画なんだろうな。
大根監督の好みのヒロインを如何に美しく、きれいに、可愛く撮るかの執念は今回も健在。
だた素の彼女は劇中の女子会でのJBの物真似をしているキャラクターに近いような気がする。
インスタグラムなどを見ていても、徹底して媚びたり、異性受けを狙わない、
自分の趣味嗜好だけに真っ直ぐなパンクな気質が見受けられる。それが潔く、心地よい。
寄って来る男を無意識、あるいは確信犯的に相手の求める姿を演じるという役柄とはギャップがある。
容姿、表情、声、ファション、行動、露出とありとあらゆる手法を駆使して、
多くの男性が抱く妄想としてのファムファタールを演じ切っているのは認められる。
この手の男性が勝手に抱く妄想像って、一歩間違えば同性からは冷ややかな見方もあるだろうし、
女性観客の拠り所の無ささは否めない。

偏愛度合★★★