フランチ~でオシャレさんOlive一派の指定銘柄「地下鉄のザジ」やジャック・タチ作品を
引用しながらも、意図的に洗練させない、お洒落さや映像美をはずした田舎臭いベタな作風への
こだわりはやはり監督夫妻が道化師、パントマイム出身であることへのこだわりだろうか?
他にもチャップリン、キートン、ローレル&ハーディ、マルクス兄弟あたりまで影響を遡っていけそう。
演出と出演を兼ねるアベ―ル&ゴードンも決して正統的な美男美女でなく、
どちらかというと凡庸な容姿を活かして、
全身を活用した動きでスラップスティックなコメディ感を表現している。
ベタさ加減が突き抜けている。
まるで書き割りか模型の様な雪に覆われたカナダの田舎町で味気ない日々を過ごす図書館員フィオナ。
彼女を演じるのがフィオ・ナゴードン。
扉を開けると雪吹雪が吹き込み、風で飛んでいくという笑えない程にベタすぎるギャクから始まる。
パリの叔母からの手紙で、憧れの街へ会いに出かけることを決意する。
「パリのアメリカ人」ならぬ「パリのカナダ人」なのだが、同じくカナダ人なのに英語しか話せず、
殆どフランス語ができないという異邦人から見るパリという設定が共通する。
都会へ上京する田舎者という姿を類型的に並べる。
ひっつめた髪形に眼鏡、垢ぬけない服でフレームザック一杯の荷物を背負い、
そこにはカナダの国旗がはためくという悪ノリぶり。
カナダ人のクリシェ化というか風刺漫画での誇張のようだ。
パリに到着して、片言のフランス語で叔母を探すが、行方が知れず、
挙句の果てに記念写真ごとセーヌ川に落ちてすべての荷物を無くしてしまう。
全般こんな感じの全身を使った道化師の様なパフォーマンスばかりが続く。
笑えそうで、笑えない。けして劇場全体が大笑いの爆笑映画ではない。隅でクスクスレベルの笑い。
荷物を拾った怪しげな路上生活者ドミニク・アベルと肝心の叔母がパリを舞台でドタバタにすれ違う。
出逢いそうで出逢わない、すれ違いがプロットの基本だけど、それ程起承転結ってわけはなく、
エッフェル塔にセーヌ川遊覧船、自由の女神とお馴染みのパリ観光名所と
小ネタをあちらこちらに散らばせて、物語を引っ張っていく。
高架下で口笛吹く「ラスト・タンゴ・イン・パリ」のメインテーマに、
出逢ったばかりの見ず知らずの男女が船上レストランでタンゴを踊るなど、大雑把なようで
細かいネタの仕込はバッチリ。
引用作品への愛に満ちたオマージュはあるけど、完ココピに模倣しすぎない、
物語と映像をスタイリッシュに構築しすぎない、意図的に外した垢ぬけない作風は面白い。
やっぱり道化師夫婦二人による全身とパリというフォトジェニックな街を活かした道化パフォーマンスだ。
偏愛度合★★★