ヌーベルバーグの流れ以降のフランス映画マニアとしては「ドワイヨン」という銘柄には興味津々。
監督であるローラ・ドワイヨンはジャック・ドワインヨンの娘といっても、
ジェーン・バーキンとの娘でシャルロットの義であるのは妹であるルー・ドワイヨンで、
こちらは腹違いの娘で、夫はセドリック・クラピッシュらしい。監督夫婦なのか。
勝手な想像だけど、幼いころから父の仕事現場で映画制作を眺めていたのだろうか?
そこで父やスタッフからの、少女への気遣いが、
ひょっとして今作の少年少女たちへの演出に繋がっているとか妄想すると面白い。
それくらい子供使いが巧みな演出だ。勿論真偽は知らない。

余談はさておき本題。
少女ファニーを演じるレオニ―・スーショーに尽きるだろう。
オーディションで1000人近くから選ばれた映画初出演の少女だ。
数人の少年少女を引き連れ、スイスへの逃亡路のリーダー的な役割であり、
二人の妹を抱えながらも、何とか越境を成し遂げる行動派の少女だ。
斎藤環風にこじつければ、ある意味この映画は戦う美少女の亜流かも知れない。
彼女の目力が凄い。
視線の動きや、不安げな表情、覚悟を決めた時の凛々しい強い意思が
映画初出演とは思えないくらいに、ナチュラルに、そして巧みなストーリーテリングとして機能している。
年齢を越えたクールな視線に期待がを込めて、将来はレア・セドゥ系の女優に育つかも知れない。
ナチス統治下のフランスでユダヤ人の少年少女を密かに児童施設に匿う支援者たちがいた。
仲間内の密告から、逃亡を余儀なくされ、最後にはスイスへと越境するまでの旅路だ。
また例によって「実話から生まれた感動の物語」と煽っているけど、感動はない(勘弁してくれよ!)。
実話から逸脱しないように、丁寧に行動を追い、生き抜く様をリアルに描く。
決し少年少女たちを穢れなき無垢なる天使としては描かない。
それ故に絶対的な神も安易に救いや癒しをを与えない。
大人の世界には真理と同時に混沌や矛盾、裏切り、強欲、殺意などが渦巻いている。
悪役ナチスと正義の倒フランス国民というわかりやす図式はなく、
統治者の命令により同胞を売るフランス人もおり、善悪な線引きは曖昧で抽象的だ。
目の前の大人が敵か味方かすら理解できない。
戦争や占領、ユダヤ人収容所など大人が一方的に押し付ける不条理が理解できない。
そんな世界のシステムを俯瞰できない無力な存在として子供たちを描く。
目の前の現実に戸惑、お互いに諍い、飢え、何度もくじけそうになりながら、
苦しみに耐えながらもひたすらスイス目指して歩き続ける姿を割と淡々と描く。
いわゆる類型的感動演出はない。
突きつけらえた事実に向い、逃げずに戦い続けるだけだ。
戦う美少女といっても、文字通りのファイティングではなく、現実を処理してこなして、サバイブするだけ。

最後にまた余談だけど、
少女のフレア気味のスカート姿から細い足が伸び、足元にはいかつい編み上げの
ロングブーツなどという姿には思わず萌える。
実は大人でも同様。女性の軍用やパンクなブーツフェチかもしれない。


偏愛度合★★★