偶然にも前日に観た「ウィッチ」と似た構造を持つ。
どちらも信仰についての物語だ。
宗教とは閉じる。
崇拝する対象が異なれども、ある対象への信仰心は、信じる者と信じない者を線引きする。
信じる者は救われるではないが、信者同士というコミュニティを形成して、閉鎖的となり、
信仰心を共有できない者たちを排除する傾向を持つ。
宗教を背景にした人の行為は慈悲深くなると同時に、限りなく残酷にもなりうる。
古くは十字軍遠征、魔女狩りにに始まり、現在世界で多発するイスラム系のテロなど
全て行動規範は特定の宗教への信仰心と排他性だ。
「ウイッチ」と同様に信仰心を持つ集団に別の何者かが侵入してきた時、信仰心はどうなるのかを描く。
信仰や宗教をテーマとした多くの映画はこの構造を持つ。
「夜明けの祈り」はキリスト教修道院が舞台であり、
神への祈りをささげる女性ばかりの完全に閉じた世界だ。
そこに侵入してくるのがソ連兵の集団であり、凌辱と妊娠という傷痕を残す。
物語は直接的にソ連兵の行動の描き、その合否を問うわけではない。
あくまでも閉じたコミュニティが異物の侵入によって、どう対処するかということに論点を絞っている。
対比されるのは修道院の院長と赤十字のフランス人女性医師マチルドだ。
前者が信仰心という対外的な体裁を繕うための事実をもみ消そうとする保守的な存在であり、
後者は医学という科学的で物理的な世界を生きるリアリストだ。
実は宗教という閉じた世界では信仰心は突然の異物への対処には長けていない。
基本的なレスポンスは、信仰心を守るために、その存在の排除と無視という隠滅しかない。
観客の視点となるのが、女性医師サイドだ。
ルー・ドゥ・ラージュが素晴らしく、カッコいい。
カーキー色の軍服を着こみ、髪をアップにまとめ、煙草をスパスパふかして、大型車両を走らせる。
眼の前の問題に現実的に対処するどちらかと言えば男性的な存在である。
彼女の行動と視点を通して、事実を追っていく。
ただ信仰を一方的に否定するわけではない。
祈りをささげる修道女たちの存在を認め、彼女たちに宿る尊い命を思い、彼女たちの為に行動する。
信仰で閉じた世界を破壊するのも、それを一層強くするのもどちらも外部の者なのだ。
閉じた世界はその外にある世界によって存在するのもまた事実なのだ。

偏愛度合★★★