作品、シリーズをこえて品質保証が売りのトム様なのに、どうにも困った作品だ。
50年代に制作された「ミイラ再生」の3度目のリメイクであったとしても、
やはり比較してしまうのは直近で記憶に新しい「ハムナプトラ」だろう。
比べるなと言われても、何となく比べてしまう。
原題こそ「The Mummy」でエジプトのミイラが蘇るという設定は同じでも全く異なる話になっている。
蘇るミイラがハゲ親父の司祭だった「ハムナプトラ」に対して、こちらは美しき王女だ。
更にはどこかB級感が漂うブレンダン・フレイザーとトム・クルーズを比べればその差は明らかだ。
でもヒロインに関しては完敗。
「ハムナプトラ」はダニエル・クレイグのパートナーであり、年を重ねるごとに
美しさに磨きをかけてきたレイチェル・ワイズと並べると、
アナベル・ウォーリスは近年稀に見る華に欠けるヒロインだろうか。
シリーズ続投もあるのか?不安をあおる存在だ。
そう、問題はこの「ダーク・ユニバース」というマーベル、DCのアメコミ両雄の続き、作品を越えての
物語と世界観の連続性というシリーズ化をホラー業界に導入したのが元凶となっている。
正直、興行的な金の臭いしかしない。
これから登場を待つのがミイラ男に半魚人、吸血鬼?全然期待がわいてこない顔ぶれだ。
「ハムナプトラ」は別に好きな作品ではないが、
その後に柳の下の泥鰌を狙う続編こそつくられることにはなったが、一応作品単位で完結している。
オイオイと説明されるのかもしれないが、現時点では異物としか感じないジキルとハイドやら、
悪を識別、分析、拘束、破壊を目的とした秘密組織プロディジウム(設定自体が時代遅れで意味不明)
が唐突に挿入されるプロットは、説明不足で構成自体がボロボロだ。
トム・クルーズがお抱えの信頼筋クリストファー・マッカリーを呼び、手直ししたという話もあるが、
結果は成果に至らず、散漫な展開となっている。
ミイラが蘇って、呪術で世界を征服をするってんも今更感炸裂で月並みなのだけど、
大都市を襲い、混乱させるという光景をいったい何度見たことか。
オイオイ、またロンドンかよ!
またしても飛行機から脱出劇、またしても襲い掛かる砂嵐から逃げながらいつもの姿勢よく、
手を上下に動かすアスリートのようなくトム走りと全編に配した見せ場に目新しさは皆無。
「キングスメン」の敵役が印象的だったミイラ王女ソフィア・ブテラの非人間感は悪くないけど、
ラッセル・クロウがしでかすジキルとハイドの密室での変貌なんて、もう笑うしかない。
後々のシリーズユニバース)への(わざと説明しない)思わせぶりがクドイ。
ダーク・ユニバースのスタートには、既にダークな暗雲がいっぱいに立ち込めており、幸先悪いぞ。

偏愛度合★★★