悪い予感は的中した。
「コンビニ・ウォーズ」でのリリー=ローズ・デップのパターンだ。
ただひたすら、門脇麦を愛でるしかない。
偏見かも知れないが、自分が好きな役者には個性は固有の間合いがある。
例えば満島ひかりや二階堂ふみなどには、その人にしかできない、独特の間合いとリズムがある。
仕草や表情、台詞の息継ぎの仕方などが集まって、キャラクターをつくりあげ、
他者には絶対真似できない独特の間合いを持つ役者がいる。
それは汎用性のあるテクニカルな熟練や訓練によるものではない。
それが個性なのだ。
満島ひかりは何を演じてもやっぱり満島ひかりだ。
でも他の誰も決して満島ひかりにはなれない。
門脇麦も経験値は少ないけど、彼女ならではの間合いを持つ女優だろう。
ブレスが明確で鋭角的な満島ひかりとは対照的で浮遊感のあるふにゃふにゃの不定感がある。
声も素晴らしい。喜怒哀楽によらず、ぼそぼそと頼りなげに呟く。
また確信犯か、無意識か不明だけど、やや挙動不審なトリッキーな動きをする。
それらは役柄とうまくはまれば、その間合いが引き立ってくる。
アテ書きらしいので、そこは問題ない。
2時間弱、十分に麦鑑賞をすることが出来る。
器用な高畑充希とか松岡茉優でも、きっとそれなりにこなせるだろうけど、
意図的でない些細なずれ具合は門脇麦しかできない。
「人気脚本家」らしい尾崎将也という監督(脚本)のキャリアは全然知らないけど、
余りの無能さは、今後悪い意味で覚えておいた方がいいだろう。
ありえないくらいに月並みな台詞に、ご都合主義な設定とプロット、彼女以外のキャラクターは
全て展開だけのために用意されたような薄っぺらさには、全くリアルに感じられない。
リアルって現実世界というリアリティではなくて、物語としてのリアルな生々しさということだけど、
三浦貴大の無自覚な無神経さ、YOUの毒、マキタスポーツの能天気さなど、
全て他の作品での既視感しかなく、配役の無駄使い。
「世界は今日から君のもの」という仰々しいタイトルも理解できない。
主人公は、物語の終わりに然程成長していないし、成長する必要もない。
そもそも彼女自身の内面的な主観ではなく、
如何にも出来合いに用意された「成長紛い」を上から目線で偉そうに描くのが耐えられない。
これは酷いわ。

偏愛度合★★