間違っているとか、いや間違いじゃいとか、いう問題なのだろうか?
そもそも彼女の何を肯定したいのかすら全く感じられない。
それは観客の無知さ、馬鹿さであるなら仕方がないが、
意味ありげに問いなき問いを提示されても困ったものだ。
曰く

「人は人生から逃げ出したくなる。運命の変化に向き合えなくなることがある」

それには同感だ。でも何故それが週末に福島からに渋谷へと高速バスで出向いて、
デリヘルをすることなのかが皆目見当つかないのだ。
純粋に金のため?それとも自虐的に自分を貶めたいのか?それが罰ならばその罪とは一体何か?
この行動原理のミッシングリンクを一切描かない。
結果として毎週末2年にも渡り、その行為から逃げることなく続けている。
根幹となる部分が全く観客に届かない。
でも唯一の救いと言えば、彼女を演じる瀧内公美の存在感だ。
境遇を嘆く悲劇の主人公ぶるわけでも、破壊衝動に駆られる訳でもなく、役所勤めも、
父の世話もデリヘル業も、過剰に演技力を駆使するわけではなく、ナチュラルに淡々と演じる。
誰しも周囲何百メートルかの範囲にはひとりぐらい見つけられそうな自然さだ。
だから物語の主幹が欠落していても、極端な居心地の悪さや違和感はない。

また震災後、原発事故そのものを具体的に描くのではなく、そこから現在まで、
そしてこれからも未来永劫続く、現実の歪みを映画の映像としてとして残したことは評価すべきだろう。
仮設住宅での暮らし、働かずに補償金で飲んだくれ、パチンコばかりしている父の姿、
立入禁止区域となった自宅への訪問など、現実をそのままに描く。
自分のような遠く離れた門外漢やこれからの世代へと伝えてかねばならない、
決して物語の絵空事ではない、ありのままの福島の現実だ。

瀧内公美以外にも、光石研、高良健吾、柄本時生など、芸達者な俳優陣を配しているだけに、
タイトルの掲げる「彼女の人生は間違っていない」という問いがもったいなくも空回りする。

偏愛度合★★★