何とこの手があったとは!!

アメコミ映画には然程興味がなく、更には「X-MEN」シリーズに至ってはシリーズを追うごとの
質低下と更にはそれをなかったことにして過去からの力技での仕切り直しにはうんざり。
ローガン(ウルヴァリン)のスピンオフも同様だ。
期待値ゼロだったけど、どうも世間が「ローガンが老眼」とオヤジギャグを執拗に繰り返し、騒がしい。
仕方がなく、劇場で開封して、びっくり!
アメコミ世界へのメタな一発ネタな怪作だったぞ。
最初の「X-MEN」から17年間に渡って、同じ役を演じてきたヒュー・ジャックマン。
当然その分だけ役者自身も加齢しているに加え、
近未来が舞台ということで、もう見るからにヨレヨレのカギ爪のおじいちゃん。思わず苦笑。
そこはミュータント自体がほぼ絶滅した世界であり、、無敵だった治癒能力も衰え、
老いた生身の人間として老眼鏡が手放せない、枯れすすきのような元ヒーロー像には驚愕する。
自殺衝動も心の奥底に抱き、死と向き合いながら絶望感と日々を過ごす。
このおじいちゃんが更によれよれでやせ細った薬漬けのボケ老人と化したプロフェッサーXと
まるで世捨て人の様にメキシコ国境付近で暮らしているのだ。
滅びゆく者たちの寂寥感というか、ぬぐいきれない悲壮感が半端ない。
劇中に少女が愛読していると負いう設定で「X-MEN」のコミックブックを登場させ、

「実話を元にしているけど、現実の話じゃない。現実では人は傷つく」

とアメコミ世界額を否定するメタな台詞を重ねる。
ある意味MARVER社のこの設定の脚本、作風の承認という「攻め」にも驚くばかりだ。
二大巨頭から連発されるアメコミワールドで、一度しか使えない禁じ手でもある一大一発ネタだ。

死を待つ老人倶楽部に闖入するのが
人間兵器として極秘裏に開発、培養され、逃亡生活をおくるミュータントたちという設定も王道ながら、
滅びる者たちと次世代の者たちが向きい合う相対的な世界観が物語構造を強固なものにする
特に12歳のダフネ・キーンが演じるローガンと
同等かそれ以上の戦闘、治癒力を持つ最後のミュータント新世代が素晴らしい。
役者としてもエキゾチックな顔立ちといい、今後の期待値大。
聖地を求めて逃げる者たち。
微かな希望を求めた巡礼の旅といってもいいだろう。
「シェ-ン」のあからさまな本編、台詞の引用を観ても明らかなように
近未来を舞台にした西部劇を基調としている。
監督のインタビューでは「子連れ狼」なんて引用もあった。
成程そう言われれば、疑似家族的な旅路には納得できるな。
彼らを追う者たちの旅をロードムービー形式で描き、先々で衝突を繰り返す。
多くの血が流れる。
どこまでも容赦なく、執拗な殺戮描写を重ねる。
人を殺すことで背負う罪と死まで付きまとう深い業を描き、
皮肉なことに無残な死を描けば描くほどに、やがて死にゆく者の生きることへの執着が現れる。
アメコミというジャンルを借りた、人間の老いについての映画でもある。
最後には老人は死して屍う拾う者なしとばかりに、次世代へと希望を託して静かに去っていく。
この作品全体を最初から最後まで貫く、
ある意味禅や仏教にも通じる東洋的な無常感こそが、作品の物語を力強くしている。

こんなメタな一発ネタは一度しか使えない。
これでようやく「X-MEN」シリーズも有終の美を飾り、去っていくのかと思えば、
「LOGAN」自体がスピンオフ的な位置づけらしく、相も変わらず、シリーズは延々と続いていくようだ。
あゝ飽くことなき利潤追求がどこまでも続くようだ。
ハリウッドというか、人間ってつくづく業の深い、貪欲な生き物だった。


偏愛度合★★★★