湯浅政明監督は前作「夜は短し歩けよ乙女」で初めて体験したけど、
カルチャーショックとも言えるくらいに、アニメ的な簡略化されたデザイン、
変形や疾走感など極端に誇張された描写力には参った。
熱烈なファンがいるのもわかる、特異な作家性のあるアニメーション監督だ。
まだまだこれまでの作品を追えていないが、とりあえず新作ということで

確かに斉藤和義の「歌うたいのバラッド」は素通りだし、ポニョは苦手な宮崎駿作品だし、
心を閉ざした少年にも、音楽に捧げた青春にも、地方都市の閉塞感にも
個人的には無縁なので、その意味では実は物語世界には置き所がない。
では作品自体が退屈なのかと言えば、正反対で、設定の持つ共感性よりも、
作画(絵)の持つ物語の語り口と躍動感が半端なく、目が離せない。
パソコンや携帯、アンプや楽器、舞台となるランドスケープの位置関係などディテールは
リアルだけど、線画自体は極端に簡略し、戯画化するという相反するものの両立がお見事。
カラフルな色使いも素晴らしく、省略と緻密さと過剰さという絶妙のバランス感がある。
更には歌、楽器など音楽が奏でるというビート感が加わり、
時としてある種の酩酊感というかトリップ感を醸す。全く癖になる酔いだな。
やはりこの監督凄いわ。
引き続き、フィルモグラフィーを追っていくことにする。

偏愛度合★★★