十年ほど前、イタリアへ旅行へ出かけた時、夜ホテルでテレビを付けたら、
そこにいたのはは何処かで見たことがるミツバチのアニメだった。
「昆虫物語 みなしごハッチ」だ。
日本人が思っている以上に、ヨーロッパなど海外で日本のアニメが放映されているみたい。
そして「鋼鉄ジーグ」だ。
監督の溢れんばかりのジーグ愛に満ちている。それは否定できない。
イタリアではテレビ放映で夢中になった世代が大人になってもジーグを忘れないらしい。
確かに自分もその世代にあたり、放映は勿論、関節部分が球状の磁石となった
超合金の玩具も持っていたが、流石に主人公やその物語の詳細は殆ど忘れてしまった。

しかし。
出来上がった作品は何故か「悪魔の毒々鋼鉄ジーグ」だった。
あゝ何ということ!
件の「悪魔の毒々モンスター」はひ弱ないじめられっ子が
有毒廃棄物が入ったドラム缶に飛び込み、何故か化学反応によって、
醜悪なモンスターへと変身を遂げ、やがて悪が蔓延る街で正義のために
悪と闘うヒーローとなるというB級モンスター映画。
ヒロインが盲目じゃないけど、頭のネジの緩んだ美女だというのもちょっと似ている。
キャラ設定とプロットをそのまま借り、 何故か強引に大好きなジーグと結びつける。
そもそも主人公をジーグと呼んでいるのはアニメのDVDに夢中のヒロインで、
怪力と再生パワーはあるけど、直接的設定は全く関係はないのだ。
冒頭、腹の出たオッサンの日々が続きなかなか肝心のジーグにたどりつかない。
でもうだうだの末、日本語で邦題と同名のタイトルが
ドーンとスクリーンいっぱいに踊るとちょっと歓喜するぞ
更には「ダークナイト」のジョーカー擬きの歌謡曲を歌うサイコパスの悪役をミックスするなど、
通常なら90分尺程度の一発ネタ痛快モンスターアクションのはずが、
あれもこれも足して、盛り込み過ぎ、やり過ぎ感いっぱいなのだ。
ちょうど相手との間合いと沈黙が耐えられなくなって、
とりあえず知っていることをベラベラとひたすら喋り続けるオタクのようだ。
全体的にはプロットは脱線と無駄が多く、些か破綻気味。
勧善懲悪のヒーローもののようで、スーパーパワーを身につけた主人公が
最初にやるのがATM泥棒だというチグハグなハズし方には苦笑するしかない。
でも愛がありきの過剰なサービス精神が溢れ、決して憎みきれない。
挙句の果て、ジーグといい、サイコな悪役といい作り手の愛故に
キャラがひとりで立って歩き始めるのだろうか、死んだかと見せて
実は……が執拗に繰り返される。
もう付き合うしか仕方がないけど困った展開だ。
ハイ、ハイ「鋼鉄ジーグ」が好きなのはわかりましたよ。

偏愛度合★★★