本当にウディ・アレン版「ラ・ラ・ランド」だった。
ただ偶然の一致というより夢見る恋人同士がお互いに愛し合っても、運命のいたずらで、
それぞれ別々の道を進み、何年後かに再会するというのは物語の定石であり、珍しくもない。
類似した物語のモチーフを使いながらも、わざわざ言われないと気が付かないくらいに作風は異なり、
紛れもないウディ・アレン節が全編からプンプン漂っている。
流石に近年老いてからは自ら主演するのは避け、
自分のアバター的な役柄(今作ではジェシー・アイゼンバーグ)を配して、その芸を継承させる。
お馴染みの全編流れる(モダン以前の)古典的なジャズナンバー、
舞台となるのが1930年代のはハリウッドとニューヨークという独壇場もあり、
アイゼンバーグのなり切りぶりに加え、ナレーションをアレン自身が担当しているので、
これでもかというくらいにウディ・アレン感でお腹いっぱいになる。
相変わらず女優の趣味がいい。
売れっ子スターを起用するというより、ブレイク前の逸材を発掘して、巧みに演技を引き出す。
それはダイアン・キートン以来の手腕だ。
スカーレット・ヨハンソンといい、件の「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンといいアレン映画をステップに
スター街道へと躍り出た。
昨今バンパイア映画の悪しき偏見を打ち破る作品チョイスが見事なクリステン・スチュワートと
ブレイク・ライブリーのさっぱりした女っぷりというダブルヒロインの対比が面白い。
関係ないけど当然「ふたりのヴェロニカ」とくればキエシロフスキー作品を思い出す。
久々に観たいな。
虚実入り混じる実名のスターたちにゴージャスなドレス、シャンペン、豪邸とうっとりする夢の世界だ。
何せ今作の撮影監督は初組み合わせのヴィットリオ・ストラーロなんだから文句なし。
映画を観始めて初めて意識した偏愛する撮影監督なのだから、この感慨もひとしおだ。
作品自体は割と手慣れた感じで、とりわけ目新しさはなく、肩の力のぬけたいつものスタンダードだけど、
時々「ブルー・ジャスミン」という超ド級に意地悪い傑作を撮るのだからまだまだ侮れない。
ウディ・アレンはほぼ年1作のペースを守り、新作が公開されれば必ず劇場へと駆けつけていたが、
いつまでそれを続けていくことが出来るのかはちょっと不安にはなる。
多くの映画ファンにとって失った時の喪失感は大きいだろう。
縁起でもないけど、そんなに遠い未来ではないかも知れない。


偏愛度合★★★