ガーデニングには全く興味なし。
ヒロインの様に植物恐怖症というわけではないが、基本めんどくさがりで、手入れ以前に、
元気な樹々すらもいとも簡単に枯らしてしまう特殊技能に長けているのだから仕方がない。
同じ劇場で同時にガーデナーの女神ターシャさんのドキュメンタリー映画も公開され、
そこは失礼ながら、さながらガーデナーおばさんの決起集会の様だった。
何とな髪形やファション、小道具といった外見でわかる。何か宗教勧誘者に近いものを感じるけど。
劇場へ足を運んだのはポスターやチラシにあるヒロイン女優故だ。
特に好のみの顔立ちというわけではなく、
ジェシカ・ブラウン・フィンドレイという名にも聞き覚えはないけど、
何となくファッションといい神経症的な役柄といいひと昔前のウィノナ・ライダーを思わせる雰囲気だ。
少女趣味のフリルと釦が付いたズンだらけのワンピ―スだけど、色合いは喪服にしか見えない。
几帳面だけど、神経質でコミュニケーションスキルには欠け、対人関係が苦手なキャラクター設定。
予想通り、時代が違えば如何にも初期のウィノナ・ライダーが演じそうな役柄だ。
だからガーデニング映画というよりも、彼女の視点に共感して、その不器用な恋物語として、
植物を通じて世界を広げていく、そっと見守ったいたくなる成長譚として存分に楽しんだ。
名優トム・ウィルキンソンの手堅いサポートも見事。
彼は声が素晴らしい。低めで説得力のある声だけで全てを語ってしまうのだ。
映画を観終わっても、ガーデニングを始めてみようとは全然思わないけど、
植物が持つささやかだけど人や世界を変える力と同時に人が生きていきて、
蓄積された記憶奥底に隠されている樹々の思い出の欠片には胸を打つ。
きっとこれは誰しも持つ普遍的な感情でもあるのだ。

偏愛度合★★★