やはり主題や作風と文体は一致すべきだ。

もはや常連というか、カンヌ映画祭好みの監督ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ。
社会問題を反映したドキュメンタリー映画やそれに準じる劇作品をつくり続けている。
確かに社会全般へ向けるまなざしは、問題意識が高いが、
その映画的な手法はドキュメンタリー的なものであり、より洗練されたテクニカルなものではなく、
いい意味での外連味には欠け、劇映画であっても物語の持つファンタジー性は薄い。
現実逃避としての映画を求める観客にとっては、どこか説教臭いというか、
やや監督のプロパガンダのみが先行している感じが否めない。
正直言えば、退屈さを感じることが多い。

今回、その監督がサスペンスという新機軸に挑戦してきたのだ。
ここで生じたのが、冒頭で示した、主題や作風と文体(映画的手法)の不一致。
いつも通りの変わらぬ演出なのに、やや娯楽寄りのサスペンスという作風がかみ合っていないのだ。
基本はヒロインである若い女医が物語の視点となり、自らの過失を悔い、真相を求めるという
「SEEK  AND FIND」な探偵ものの物語形式である。
でもカメラは固定で長回しを基本、パンや手持ち移動程度まででテクニカルな移動撮影はない。
インサートアップショットや切り返しなど編集での説明補足も、劇音楽もなしといういつもの手法だ。
通常であれば観客が共感を抱くべき主人公の内面や背景描写が薄く、割と淡々と行動を追うのみで、
更に致命的なのは、最後に提示される真相自体のリアリスティックで
やはり意識高い系な落としどころにはどうにも盛り上がりようがないのだ。
サスペンスの外連味を期待する観客がお門違いと言えばその通りで全く否定できないが、
何よりもこの中途半端さに居心地が悪いのだ。
結局門外漢な作風への挑戦が(好き嫌いは別にして)監督らしさを損なっているようだ。

偏愛度合★★★