「田舎ホラー」の亜流なのだろう。
『謎の映画』という本で最近覚えた「都会人が田舎者に酷い目に遭わされる」というジャンルだ。
ワシントンDCの売れないパンクバンドが田舎町のライブハウスで一夜限りの仕事を請け負う。
ライブハウスといっても森の中に立つ、掘立小屋みたいな店で、集まる客は揃いも揃って
短髪、スキンヘッドにTシャツにアーミーパンツに編み上げのブーツという愚連隊紛いの集団。
パンクバンド対ネオナチの死闘というのが売りのようだが、設定自体は明確にしない。
パンクといっても、人の良さそうなアントン・イエルチンと女性がメンバーという軟弱バンドだし、
シド・ビシャス以来の鎖にツンツン髪形に鋲打ちジャケット、破れたTシャツに鎖といった類型はなく、
下手くそに叫びまくる音楽を除けば、ニューロマンティックなNWバンドみたいだ。
対するネオナチといっても、
わかりやすい鍵十字を背負っているわけでも、ヒトラー賛美を叫ぶ訳でもない。
アメリカ映画業界はユダヤ人が仕切るため、ナチ賛美ともとれる描写はまだタブーなのだろうか?
「田舎ホラー」とはいったものの、都会の軟な若者が田舎の狂人に殺される「悪魔のいけにえ」ほど
常識では理解不能な狂気の領域に属する集団ではない。
パトリック・スチュアートが頭だけあって、あからさまは見せびらかしはないが、
親分と下っ端という主従関係が明確で高度に組織化、犬の管理など役割分担が分業化されている。
方法に容赦はないが、警察への対応なども、決して表ざたにはならないように
巧みに画策するインテリヤクザの集団みたいなものか。
無関係な殺し(その経緯は不明だが頭に刃物が刺さった若い女性)を見てしまったため、
楽屋部屋に監禁され、証拠隠滅のために画策される。
中盤以降は、ほぼ密室劇となる。
地下室や銃の薬莢の数など伏線的な小道具を張り巡らせているのだけど、如何せん演出が粗い。
結果から、逆に伏線に気がつくという下手な小技を繰り広げる。
キャスティングの予想通り、唯一のヒロインのであるイモージェン・プーツとアントン君が
インテリヤクザのパトリック・スチュアート相手に生き残るかという展開。
チラシにもある通り、迷彩メイクをして長刀を手に向かう後ろ姿は絵になるが。
それなりには楽しめるんだけど、全体的にはちょっと雑。
前作「ブルー・リベンジ」と同様に低予算でもそれなりに面白い作品をつくるけど、力技一発が目立つ。


偏愛度合★★★