通常映画は切り取られた2時間前後にパッケージ化された物語を体験するメディアである。
そして終劇後は現実の時間へと帰っていく。
しかし鑑賞後も劇中の物語が現実世界に浸食したり、
中毒的に何度も繰り返して観るなど、時々この鉄則が通じない作品もある。
群像劇である。
一応スランプの作家、いかがわしいビジネスマン、離婚後親権争い中の女性と三重奏で交錯させる。
そして群像劇の醍醐味は、別件進行させていた断片を最後の最後で完成させる仕切りにある。
物語が1本の線として繋がりカタルシスが生まれる。
今作は空から蛙がいっぱい降ってこないけど、
仕切りは反則ギリギリで決して説明的ではなく、観客に委ねる結論となっている。
初見だけでは「え?」と戸惑った。
単純なパズルを完成させた快感はない。
でも結構引きずる。
帰宅途中に映画を思い起こし、自分なりの答えを探そうとする。
また映画を観た誰かと確認し合いたくなる。
確かにもう一度観る必要のある映画だ。多分これこそ監督が確信犯的に意図していることだろう。
「クラッシュ」が正攻法の仕切りはだったので、今回はあえて振れ幅を多めにとって、
繋がる情報を一部隠蔽したり、略したり、あるいは隠喩で置き換えたりしている。
繰り返して鑑賞して仕掛けを探すのが面白い。
色彩設計などにも凝った仕掛けがあるらしい。
余談だが、ミラ・クニス目当てだったが、今回はオリビア・ワイルドのはすっぱな感じが素晴らしい。
偏愛度合★★★★