鑑賞後、何かがしっくりこなかった。
 
どこかしらご都合主義的な違和感を感じた。
主人公の周囲は良き人ばかりで、与えられた試練というより都合よく物語が進む。
劇場からの帰り際、振り返ってみた。
 
劇場の暗闇で沸き起こる感情は時として
一度クールダウンさせてから情報整理して解析しないと本質が見えない時がある。
この過程もまた劇場で映画を味わう醍醐味なのだ。
 
居間でのDVD鑑賞は現実の生活と地続きなのでどうしても余韻が保てない。
 
テーマは障がい者の性。
公に語られることもなく、ましてや娯楽映画の題材になることも少ない。
ともすれば当事者以外の外から題材を描こうとすると二つの極端な視点に陥る。
 
一つは物見遊山で下世話な視点。
好奇心というか、興味本位で普段は隠された部分を明らかにしたい衝動。
 
もう一つは同情的な視点。
差別や抑圧から解放しようとするある種の同情的、共感的、さらには偽善的な衝動。
 
対極のようだが実はこの二つは同質のものなのだ。
この題材を外部から描こうとすると、ニュートラルな立ち位置を守ることが難しい。
 
そこで腑に落ちた。
 
唯一の方法が当人の視点に徹することなのだ。
映画の最後に当人の手記を元に映画化したというクレジットがある。
物語は当人の目に映った世界なのだ。
いささかご都合主義的に携わった三人の女性が美化や正当化されていたり、
彼を支えた良き隣人たちの行動もまた納得がいく。
 
外から彼を描くのではなく、彼の感じた世界を描く。
事実をベースにしながらも、記憶の取捨選択によって再構成される。

特に女性観に顕著に現れている
自分の愛した女性が自らを愛し続け、
葬式に諍いなく駆けつけて涙する何て男の妄想だよ。
劇中でも彼女たちは魅力的。当然内面はなく生身の存在ではないが。
特にヘレン・ハントの脱ぎっぷりにプロ意識を感じた。
決して若くも、セクシーを売りにしているわけでもない演技派女優の生々しさを痛感。

そしていささか皮肉屋だが詩を愛する主人公の視点は世界を羨み、
憎むこともなく、日々を生き続けるもので作品のトーンは心地よい。

 
偏愛度数★★★