冷静になって昼間から考えていた。
俺のように、医者にかかって自分の心に問題がある奴は、結婚とか出来ないんじゃないかって考えていた。
強迫性障害。他人から言われたこと、外部からの情報、周りのものが自分を追い詰めているように感じてしまう。相手のことを考えすぎて、空回りして、自滅する。これって、家庭を持つとか、誰かのために生きるとか、そんな次元にすら立てない、人を好きになるっていうフィールドにすら立てないってことじゃないのか。
俺は、「そんなことない」って誰かに言われたかった。それだけなんだ。それだけで十分だった。今思えばそれが本質的な動機だったんだろう。そんな程度の動機で、こんなことしていたのか。身勝手な奴だと思う。
今までを通して、俺を実際に見る周りの目は、どうだった?奇異な目で見ていたんじゃないのか。俺は、相手のことを思いやりたかった。それだけだったけど、実際はどうだったんだ?俺は、それが怖い。相手は俺のことを、どんな目で見ていたんだ?
ああ、こんなことを考えるから他人が、周りが怖いんだ。婚活とかそれ以前の問題じゃないか。他人が怖い。こんな風に考える奴が、幸せのことなんか考えられるはずがない。怖い、怖い。相手のことを思いやりたいって思っているのに、思いやろうとして、それが相手に伝わらない。それどころか、相手から逃げようとすらしている。怖いから。
会社の人間。仕事の人間。隣のデスクの人間。会議で隣の席の人間・対面の人間。
話をしていることが、言葉の裏で俺の悪口を言ってるんじゃないかって思ってしまう。
何気ない日常会話が、皮肉めいた俺への悪口に聞こえる。怖くて怖くて、苦しい。こんな状態で、相手を思いやろうとしても伝わらないんじゃないか。
もうやめよう、婚活なんか。そんなことをするフィールドにすら立ててない。心の病ってものが、こんなにも苦しいなんて思ってなかった。10代の頃の、平然としていた自分が羨ましくなった。そして、そんな自分が今まで平然と素知らぬ顔で相手の心を踏み潰していたなんて。なんて酷い生き物だったんだ、俺。そんな自分の酷さに気づいて、そして他人が怖くなった。
相手の期待に応えようとする。相手のことを考えようとする。それが自分の酷さを直す方法だと思っていた。でも、空回りして、奇異に見られて、結局余計に自分を苦しめた。
結果、人間が怖くなった。
他の人間を公然と叱りつけて、平然と踏みにじる人間。威圧的な態度で相手に何も言わせない人間。アンフェアな状況だけ作って、踏みにじる人間。俺は自分にも当てはまることだと思って、他人に対して臆病になった。自分のことじゃないのに、自分のことのように思ってしまう。怖い、怖い、怖い。なぜ俺は、平気だったんだろう。なぜ他の人は、平気なんだろう。俺には、それがわからない。
こんな心根で生きるとするなら、俺は自分で自分の幸せを形にしなければならないだろう。フィールドが違うなら、戻そう戻そうともがくのが真に正しい手段だとは限らない。
相手に俺のことが分からないなら、分からない人間なりの幸せを見つければいい。
それをまず考えるために、参加している婚活は退会することにした。