「また、か。」
23:17。
その文字が浮かぶディスプレイに反射する泣きそうな顔が自分のものだと気付いた頃、携帯電話は節電モードに入った。はぁぁぁ、と長いため息を吐きベッドに身を投げる。しなければならないことが沢山あるのに、ひとかけらもやる気が出ない。
「だから嫌やねん。」誰に言うでもなく、枕に顔をうずめボソっとこぼす。雨の音を聞きながら、眠りについた。
ーー
「また、やねんな」と笑いながら、良太がマグカップを差し出した。奪うように受け取り、余計なお世話とひとにらみする。少し零れて手にかかった。熱い。
「もうっほんまにっ嫌やっ!」
「ははは。実感こもってんな~。」
「だって!もう!ほんまに!嫌や~!!」
誠実な男がそのうち現れるよ。大丈夫、と良太が頷くとこの話は終わる。そのうちっていつよ、と憎まれ口をたたきながらも私の気分は晴れている。ここ数ヶ月で、この良太と私の早朝会話は習慣化されてしまった。私が失恋すると、良太の喫茶店が開店する前に愚痴を聞いてもらうのだ。
「あーあ。ほんまに・・・あたし、どうしたらいいんやろ。」
「まぁまぁ。男は他にいっぱいおるんやし、気を落とすなって。」
「だってさ~・・・いっつも同じ終わり方って私に問題あるからじゃない?もう、恋愛なんかしたくない。」
「そんなんゆってても、いつもしてるやん。」
「自分からじゃないもん。・・・そうやん!相手から言い寄ってくるくせに、ちょっと好きかも~って思ったら音信不通ってひどいわ!」
そう。私の恋愛はいつも、音信不通で終わるのだ。確かに付き合う前の状態で、君とは合わないって言いづらいでしょう。勘違いすんなって言われるかもしれないしね。だけど、音信不通ってやり方が卑怯だと思う。
と、いつもと同じことを良太に主張する。
「はいはい。そんなに元気だったら仕事も頑張れるね。いってらっしゃい。」
「・・・冷たい!もう、お店に来たれへん!いってきます!」
良太は困ったように笑って見送ってくれた。