「マッキンとニンニン」
♪ ルッタタルッタタ マッキンは~ かーわいくって かーわいくって プープープー
今日も自作の、自分を誉める歌をうたいながら、マッキンはご機嫌で歩いていました。どうしてご機嫌かって?。それは今朝、お母さんのお皿洗いをお手伝いしたご褒美に、お父さんから50円もらったからです。これから、もらった50円で、おやつを買いに行くんです。
♪ ルッタタルッタタ マッキンは~ ム~チムチおしりだ プリッ プリッ プリッ!
イオンに到着すると、マッキンは、ペットショップに行って、小さくてかわいい子犬をみました。「いいなぁ、私もワンちゃん飼いたいなぁ」。そして、お菓子コーナーに行きました。マッキンは、食べたいお菓子を3つ選ぶと、手提げ袋からノートと鉛筆を取り出して、3つで何円になるのか足し算を始めました。足し算は、この間、学校で習ったばかりです。
「えーと・・70円だから、20円多いのか。」
マッキンは、20円のミニチョコレートを、棚に戻しました。そして、お菓子を2つ持って、レジに行こうとしたところ、主婦が2人、
「最近は不景気でいやぁ~ねぇ~。主人なんか、残業ばかりよ。」
「うちも。私もパートをしてるけど、ホント、お金を稼ぐって、大変よね。」
と言うのが聞こえてきました。マッキンは、握りしめていた50円を見て、うなづくと、お菓子を2つとも棚に戻し、イオンを出ました。
♪ がーんばれマッキン! ち~からのかぎり パ~パとマ~マも ニッコニコー
マッキンは郵便局に着くと、手提げ袋から通帳を出して、郵便局のお姉さんに、50円と通帳を渡しました。
「あらマッキンちゃん。今日は1人で来たのね?。それじゃ、50円預けますよという紙を書いてほしいから、ちょっと待っててね」
何とマッキン、自分名義の通帳を持っているんです。お父さんがくれた50円は、花火職人のお父さんが、いっぱい花火を作って、稼いだお金です。もったいないから、貯金をすることにしました。マッキンはこれまでも、親戚の人や、お父さんがくれたお年玉は、ほとんど使わず貯金をしています。よく来るので、郵便局のお姉さんとも知り合いです。お姉さんに手伝ってもらって、預入用紙に名前と金額を書きました。小さいから、お金の価値はまだよくわかりませんが、お金が貯まったら、お父さんとお母さんに、何か買ってあげたいと思っています。
「マッキンちゃん、50円確かに貯金しましたよ。通帳お返しします。はいこれ、1人で来てえらいから、ポケットティッシュどうぞ。」
「どうもありがとう」
マッキンは、金魚のついたポケットティッシュをもらいました。そして、郵便局を出ようとしたところ・・
「強盗だ!」
そういって、3人の男が押し入ってきました。マッキンは後ずさりしながら、持っていた通帳を、背中に隠しました。1人が、カウンターの中にいたお姉さんの首にナイフを当てると、大声で言いました。
「金庫の有り金を全部出せ。おとなしく従えば、この女に危害は加えねぇ!」
残りの2人は、他の局員にナイフを向けています。マッキンは、ビックリして動けなくなりました。すると、近くにいたおばあさんが、マッキンを抱き寄せて、「だいじょうぶ。だいじょうぶだからね。」と言ってくれました。おばあさんの手の温かさで、我に返ったマッキンは、そっと、通帳とポケットティッシュを手提げ袋に入れると、代わりに袋の中から手裏剣を取り出して、
ヤァッ!
と、お姉さんにナイフを当てている男の右腕めがけて投げました。見事命中。男はナイフを落としました。続いて、2人の男にも、
ヤァッ!ヤァッ!
と手裏剣を投げて、男がウッ・・となった隙に、局員みんなで男たちを取り押さえました。あっぱれマッキン、表彰ものです。ですが、マッキンは泣いてしまいました。
あぁ・・どうしよう。あんなにもお父さんから、忍びの者であることを、人には知られてはならないと言われていたのに。ましてや、この手裏剣は、お家の外に持ち出してはダメと言われていたのに、黙って持ってきてしまった。あぁ、どうしよう。お母さんにも怒られる。
やがて、警察の人が来て、男たちを連れて行きました。マッキンも連れて行かれてしまいました。パトカーの中で、マッキンはずっと泣いていました。大人たちは、さぞ怖い思いをして、泣いているのだろうと思いました。
「マッキンちゃん、お母さんが迎えに来てくれましたよ」
警察の人が、お母さんを呼んでくれました。
「いやぁ、非常に勇敢な子ですね。ですが・・手裏剣なんてものを、子どもに持たせるのはどうかと思いますね。これは本物ではありませんか。」
「はい・・亡くなった祖父のコレクションでして・・申し訳ありません」
「まぁ、いいでしょう。これからは気をつけてください」
「はい。」
お母さんとマッキンは、警察からお家へ帰りました。夜、事態を知ったお父さんはマッキンに、手裏剣を持ち出したことは、約束違反だよと叱りました。マッキンは素直にごめんなさいと謝りました。でも、日頃の鍛錬のおかげで、人を救えたことは良かったねと言ってくれました。50円を大切にしてくれてありがとうとも言われました。その時、ピンポンが鳴りました。
「昼間、助けていただいた郵便局員一同です。お礼を言いたくて伺いました」
ドアを開けると、マッキンに、ポケットティッシュをくれたお姉さん、局長さん、他に職員が3人が立っていました。
「さっきは、助けてくれて本当にありがとうございました。これ、ちょっとですが、みなさんでどうぞ。」
「あぁこれはこれは、かえって申し訳ありません」
「いやぁ、まさか小さな子供が、手裏剣を持っているとは驚きました。」
「えぇまぁ・・おてんばで困ります・・」
「おじさんも、手裏剣の投げ方を教えてもらおうかな」
マッキンは恥ずかしくて、お母さんの背中に隠れました。
少し世間話をして、
「はははは。それでは、わたくしどもはこの辺で。おやすみなさい」
局長さんたちは帰っていきました。
ドアに鍵をかけ、一段落して、お父さんが怖い顔をして言いました。
「お母さん、マッキン。気付いたかい?。すぐに支度を整えなさい。彼らは、僕たちの正体を知ってしまった。話すふりをして、部屋の間取りを確かめていたようだ。・・今夜、きっと来る。さぁ、早く」
三人は、急いで本棚の裏の隠し扉に向かい、装備を整えました。マッキンは、これまで、お父さんとお母さんと一緒に、いろんな修行をしたことを思い出していました。細い竹筒をくわえて、何時間も水の中でジッとしている修行をしたこと、火薬玉の詰め方を習ったこと、矢に塗る毒の種類を勉強したこと・・まさか、郵便局のみんなが、敵の忍者だったとは・・。
この戦いに勝ったら・・子犬を飼いたい。子犬を飼いたいから、一生懸命戦おう。
マッキンは、通帳とハンコを巾着に入れ、腰にかけ、持ち場で息をひそめました。
戦いに勝って、夜が明けたら・・、明日は小学校を休んで、貯金を下ろして、イオンに行って犬を飼う。足りるかどうか、わからないけど。
家の外に、足音が聞こえる。鍛錬を続けた忍びにしかわからない、かすかな足音。
神様、力をください。お父さんとお母さんをお守りください。絶対に勝たせてください。そして、そして・・犬の名前は、ニンニンです。
(終わり)