TimeShare~タイムシェア【恋愛小説集】 -25ページ目

【髪結いの亭主・第18話】ピンクの花束

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「なんだい、なんだい、花屋さんかい?」



キミが店の入り口を塞いだピンクの薔薇の花束に近づくと、花束の向こうから、ぬっと現れたのは、篠原誠司の笑顔だった。




「せ、誠司さん?」




「こんにちは、珠水さん。昨日は失礼しました。」



篠原はそう言うと、珠水に花束を手渡した。
抱えきれないほどの大きな花束。
人生で初めてのでっかい花束のプレゼントに、珠水は思わず頬を緩めちまう。




「あらー、すごいじゃないの。こんなおっきなお花。惚れ惚れしちゃうわ~。」




キミも一緒になって頬を緩めた。



「スゲー、かあちゃん。オレ、一本もらってもいい?」



そう言ってはしゃぐ大吉を、篠原は優しい笑顔で見つめてこう言った。




「初めまして。私は、篠原誠司っていいます。急にお邪魔してごめんね。」



「オレ、鈴本大吉。10歳。」




大吉は、ぴんと背筋を伸ばすと、堂々と答えた。
篠原は憎たらしいほどの上品な笑顔でにっこり笑うと、今度はキミにその笑顔を向けた。



「いきなり、申し訳ありません。私は珠水さんの友人で、篠原誠司といいます。いつも珠水さんにはお世話になっています。」




「あらあら、いいんですよー。まあ、こんな汚い店でごめんなさいね。よかったら奥でお茶でも…ホラ、珠水、ボサッとしてないで、お通ししなさい。」



「いえ、今日は仕事の途中にちょっと立ち寄らせて貰っただけですので、お気遣いなく。それじゃ、珠水さん。また、連絡します」



篠原はそういうと、ペコリと頭を下げて店を後にしようとした。



「ま、待って。あたし、送ります。」




薔薇の花束をセット椅子に置くと、珠水は篠原の後について店を出た。
その後姿を見送りながら、キミはにやりとほくそ笑んだ。



「やるじゃないの、珠水ったら。あんな色男、いつの間に捕まえたんだろうねえ。」



「なに?イロオトコって。妖怪の名前?」



いぶかしがる大吉に、キミはふふん、と鼻息と共に言い放った。



「いい男ってことだよ。ハンサムってことさ」




「えー、そうかなあ。オレは父ちゃんの方が、全然カッコイイと思うけどなあ。」



大吉はセット椅子の上のでっかい花束を、じっと見つめてそう呟いた。








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