蝕む、潜伏期間、発症. HIVウィルス、イジメ、復讐. 「な んてね」という一言に救いを見出すか、それとも悪魔を見出すか. ここまで鳥肌が立つほど恐ろしく、そして人間心理の闇に目を背けない映画は初めてです. やはり中島哲也監督の「ぜんざいに塩を入れる」ような演出は高度な計算の上に成り立っていながらも、まるで魔法のような不思議な恐ろしささえも感じる素晴らしきもの. 正直この映画を語らずして今年の邦画は語れませんよ. 一人娘を担任を受け持つクラスの生徒に殺されたシングルマザーの森口先生. そんな彼女の復讐ということでまずは真犯人が誰かを突き止めるのかと思いきや、森口先生の告白で容易に割れてしまう少年Aと少年B. しかしこの森口先生の告白は物語の序章であると同時に、この作品の世界観をきちんと見せきる重要なシーンであることを教室、通り雨、黒板に書かれた「命」という一文字でしっかりと分からせる中島監督の演出にまず感服してしまいます. そして少年AとBが飲んだ牛乳にHIVに感染した亡き夫・桜宮の血を混入したという森口先生の告白から始まる復讐. これがまるでHIVに感染して蝕まれていく体のように、このクラスの生徒たちや親御さんたちの心を蝕んでいき、潜伏期間を経て、やがて発症するという様が本当に恐ろしいこと. 例えば森口先生の事件に直接関係ないとはいえ、HIVという言葉だけに踊らされ、渡辺修也イジメに笑顔を見せてはイジメに参加しない北原美月までをも内部告発者として祭り上げ、さらにイジメを加速させた知識のない13歳たち. 彼らは森口先生に利用されたとはいえ、イジメという自らの手で自らの人生を汚した代償として一人では何もできない弱い自分を一生掛けて悔いるという潜伏期間を味わい、そしてウェルテル先生のような熱血KYさんを見るたびに発症、つまり後悔の念に苦しめられていくことでしょう. ある意味これは殺人犯を作り出した環境への復讐. また少年Bである息子を溺愛する下村直樹の母は息子の異常さやKY教師の毎週に及ぶ訪問という潜伏期間中に心を蝕まれ、やがて自殺という発症を選ぶも、その最悪の結末も中途半端に形で終了. MBT 靴 一方でその熱血KY教師寺田良輝先生も自分の熱血KYぶりが結果的に生徒の心を真綿で絞めるように苦しめていたことを美月から突きつけられ自信喪失. 他人の話を聞かず自分の意見ばかり言う彼らもまた殺人犯を作り出した環境への復讐なんですよね. そして優秀であるが故に自分がHIV陰性であることを知り、自分に興味を示してくれる美月と付き合うことになった殺人犯・修也も所詮は13歳の子供. 母親に会いたいけど会う勇気がないことを森口先生に知られた挙句、自らの爆弾で大好きな母親を殺してしまったという、逆さ時計でも戻せない事実を告白され「どっか ん」と崩壊する心. まるでついに恐れていたものが潜伏期間を経て発症したかのように溢れ出す涙、鼻血、そして絶叫. 鹿島、ミス逃さず得点 神戸・西野監督、初 それはある意味暴力よりも残酷な復讐. 特効薬のない病気は潜伏期間という時間を経て発症すると、その感染者が死ぬまで体を蝕み続けます. それと同じでイジメや殺人は心のトラウマという潜伏期間を経て発症すると、その人が死ぬまで心を蝕み続けます. 大人は子供よりも恐ろしいことをたくさん知っているからこそ、実は大人が子供を壊すことなどとても容易なこと. 『親切なクムジャさん』 と同じく自らの手を汚すことなく行った壮絶な復讐の末に森口先生が辿り着く場所はあるのでしょうか. 最後の「な んてね」という一言が修也を地獄に突き落とす言葉なのか、それとも彼の更正を願う言葉なのか. それは見る人が決めるべきことなんでしょう. 深夜らじお@の映画館 も告白します. でもそのネタは後日ということで.