前作の下町ロケットは見ましたが、今回はどうでしょうか?
たまたまGyaoでやってたのでちょっと見てみました。


原作は読んでいないのでどんなストーリーか知りませんが、もし高精度なGPS用の人工衛星「ヤタガラス」とトラクターを組み合わせて、トラクターを自動運転して農家の省力化に繋げる?なんてストーリーなら残念かもしれません。

自動車産業も行き詰まり、最近は農業の産業化が注目されているようですが、自動化?とかAIで省力化?とか騒いでいますが、現場サイドから見てると非常に滑稽です。



農家にとって、高級なトラクターはステータスなんです。
「○○さんは100馬力のトラクターを買ったんだって」
という噂が聞こえてくると対抗心が燃え上がるわけです。w

価格は高級乗用車以上に高額(1千万円以上)ですが、営農ローンで買っちゃうわけです。



そもそもトラクターなんて年に数回程度しか使いません。
毎日田んぼや畑をトラクターで耕してるわけではありません。

水田なら収穫後の冬に荒鋤きの「天地返し」をして、春先にもう1~2回、水を入れて代掻き (しろかき)するくらいで年に3~4回程度です。時間にすると微々たるものです。

農作業の中でトラクターに乗るのはこれほど楽ちんな仕事はありません。
さらに私のようなマニアックな方はトラクターに乗るのが楽しみなんです。
その楽しみを自動運転にしてしまうのは、自動運転のスポーツカーに乗るような味気ないものでしょう。

仮にトラクターをGPSで自動運転をしたとしても、それだけで圃場を綺麗に耕せると思ったら大間違いです。田んぼや畑は四角形じゃありませんし、単純な平面の二次元でもありません。圃場の中でも場所によって水分や土質も違います。そんな複雑なアンジュレーションのあるコースを乗りこなすテクニックが楽しいのです。w

沼地を人工的に干拓したような圃場なら別ですが、小さな圃場が沢山ある農家ならGPSによる自動運転なんて余計に手間がかかるだけです。

「小さな圃場は統合して大きな圃場にすれば効率がいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、そんな単純な話ではありません。水田は水位のコントロールが大切で、数センチの高低差でうまく米が作れません。その微妙な高低差を考慮して細かく区分けされているのが「あぜ道」です。

日本は平地の少ない島国です。先人達が苦労して段々畑を開墾して生きながらえてきたのには訳があるのです。GPSやトラクターじゃどうしようもないのです。


農業の後継者問題や、農家の所得増大を目指したいのなら、まずTPPを止めることです。車のために食料を売り渡すようなアホな考えは捨てるべきでしょう。
食料自給率が40%というのは、国として自立できていない証明です。
食に対してはトランプ以上に保護主義になるべきです。

何があっても、せめて国民は飢えさせないという国策が第一にあるべきです。
自衛隊がどうのこうのって、そんなものは後の話です。
憲法改正をするのなら、基本的人権の前にまず食料問題を明確に書き込むべきでしょう。

人は食べ物がなければ3日程で死んでしまいます。
食料がなければ国として成り立たなくなります。
忘れっぽい我々は、つい先日の戦後の食糧難時代をもう忘れているようです。



さらに言うなら、農業は経済活動のための他の産業とは違います。
農業とは命を継ぐための作業であり、命を伝番するための基本的活動です。

人生80年程の短いスパンの話ではないのです。
一時の金を儲けの話じゃなくて、未来永劫ずっと人類が生きていくために必要な生命活動なのです。

ここを勘違いしてはいけません。
工業系産業とは根本的に全く違います。

何故なら、その命は人がゼロから作り出せないからです。
必ず他の生物から命をいただく必要があるのです。
食とは命を引き継ぐ行為です。

「命とは栄養素ではありません」

もしこのレベルまで下町ロケットが踏み込むなら見る価値はあるかもしれません。
まぁー所詮バルブ屋の話なので、その可能性はないでしょうが・・・w