血統:ファミリーナンバーとmtDNA
mtDNA(ミトコンドリアDNA)にはエネルギーの生産にかかわる遺伝子があるため、運動能力に関係することが分かっています。そして、この遺伝子は母からしか伝わりません。ヒトのmtDNA型の研究では陸上の長距離選手のmtDNAの遺伝子タイプにはある特定のタイプが通常の比率よりも多く現れたそうです。サラブレッドの競走能力にもmtDNAが影響します。そして馬のmtDNAの研究も行なわれ、血統書の牝系の分類を示すファミリーナンバーに間違いがあることが証明されてしまったのでした。ファミリーナンバーとはサラブレッドの牝系をグループ分けした番号です。ブルース・ロウという人がクラシックの勝ち馬を統計的に調べて出やすい順に分けたのが、1895年でした。それから100年以上が経過しましたが、最近、馬の遺伝子分析の研究が進み、母からしか伝わらないmtDNA(ミトコンドリアDNA)の遺伝子タイプとファミリーナンバーを調べる論文 (←PDF文書) が2002年にE.W.Hill博士他から発表されています。それによると、1)19系統の牝系100頭のサラブレッドから17タイプの遺伝子型が見つかった。2)その17タイプの遺伝子型をAからQまでアルファベット1文字で定めた。3)遺伝子型AからLまでは基本的な遺伝子型である。4)遺伝子型MからQまでは この研究では明らかになっていない牝系から発生したか あるいは、突然変異の可能性がある。5)ファミリーナンバーとmtDNAの遺伝子型は一致するはずです。 しかし、ひとつのファミリーナンバーに複数の遺伝子型がみつかった。 これは血統書に間違いがあるということです。以上の結果を下の表に示します。FNOはファミリーナンバーの略です。=======================================FNO遺伝子タイプ 血統書の間違い 1F, HMOD2F--3E--4J--5L, MDR6C, NDR7F--8F--9A, GDR10B--11J, L, PMOD & MUT12G, QMUT13J--14D--16F, HMOD17F --19K, OMOD22F--25I--MOD:比較的最近の世代に間違いがある。DR:昔の世代に間違いがある。MUT:突然変異の可能性がある。=======================================ファミリーナンバーに間違いがあることがわかりましたが、Fタイプはファミリーナンバーの1、2、7、8、16、17、22で共通であること。Eタイプはファミリーナンバー3のみJタイプはファミリーナンバーの4,11,13で共通であることなどが分かります。これからファミリーナンバー(mtDNAタイプ)と競走能力の新たな研究を行なうヒントになることが期待されます。これで科学的にも牝系の優秀さが証明されるわけです。私の考えでは、1)あるサイヤーラインに対して、特定のmtDNA遺伝子タイプが相性が良い場合がある。2)ある名馬のインブリードに対して特定のmtDNA遺伝子タイプが相性が良い場合がある。などがこれからの研究対象になると思います。たとえば配合でノーザンダンサーのインブリードを多くしたいと考えたら、ノーザンダンサーが種牡馬の時に相性が良かったファミリーナンバー(mtDNAタイプ)を調べることは意味があると思われます。エネルギーの生産効率が非常に良い(mtDNA=牝系)に対して、そのエネルギーをうまく使える筋肉や体の形などのタイプを配合できれば名馬が生まれると考えるわけです。ファミリーナンバーからmtDNAタイプで語られるのがこれからの血統理論になるでしょう。