「怪盗になりたいなぁ。」

人が勉強してる横でぐーたらと漫画を読んでいた真愛が急にそんなことをぼやき出した。

何だと思って顔を上げてみれば、それはどうやら怪盗ものの少女漫画のようだった。

「なに小学生みたいなこといってるんだよ。」

真愛から漫画を取り上げて、ちゃんと勉強しろと促す。

しかし真愛はぶすーっと唇を尖らせるだけだ。

「わざわざ貴重なテスト休みの1日を真愛のために割いてるんだから真面目にやってほしいよ。」

僕がそう呆れた口調で言うと、やっと真愛は生半可な返事をして僕と向き合った。


「でもさ、しょうくん。私ホントに怪盗になりたい。」

座ったは良いが真愛が発したのは勉強に関する質問じゃなくってさっきの怪盗話の続きだったから、僕はもうため息を溢す。

「どうして?」

一度1つのことに関心が行ってしまうとなかなか次に行けないのは真愛の悪い癖だ。

でも僕はそんな真愛のこともちゃんと分かるからこの際話を聞いてあげることにする。


「だって、怪盗は何でも盗めるんでしょ?」


カランカランと、真愛の細い指が揺らしたストローによってグラスの氷が鳴った。


真愛が伏せていたまぶたを上げて、色素の薄いその瞳に僕を映す。


あぁ、まただ。


「そうしたら、こうくんの心も盗めるじゃん。」


また、こうやって君は、

僕にこうを照らし合わせるんだ。


「…、怪盗だから、何でも盗めるとは限らないんじゃないかな。」


憂いの帯びた瞳が僕の瞳のもっと奥を見つめるみたいに僕を捉えて離さない。


「真愛みたいなへっぽこ怪盗じゃこうは捕まえられないよ。」

真っ直ぐな視線から逃げるように、笑顔のバリアをはる。


「どっちにしろ、私は大怪盗にならなきゃダメか。」


真愛が真面目な表情をくしゃっと崩して笑った。


こうはずるい。


真愛のことなら、他の女をたぶらかしてふらふらしてるこうなんかの何十倍よく分かってるのに。

真愛を、泣かせたりしないし。

真愛が大怪盗になる必要もないのに。


こうはずるい。



「それにしても、顔のパーツはしょうくんとこうくん、どっちも本当にそっくりだよね。」


真愛がよいしょっと立ち上がって僕の隣に座ったかと思うと急に眼鏡を奪ってきた。


「ちょっと、真愛。」


視界が急激にぼやけて、よく分からない。


こんな世界じゃ、ふらふらして、

掴めない。


「ま——」

手を掴んだ。
それと一緒に、

崩れるように真愛と一緒に床に倒れ込んだ。


「しょうくん、」


眼鏡が戻された。

真愛の顔がはっきりと視界に映る。


「私、どうしてしょうくんを好きにならなかったんだろう。」


そっくりな双子の兄弟。

おちゃらけているけど、クラスの人気者なこう。

ただ真面目で取り柄のない僕。

似ても似つかない。
全く正反対。


でも、1つだけ、1つだけ僕らは同じところがある。



「あら、こう、おかえり。真愛ちゃん来てるわよ。」


下で母さんの声がした。

真愛の表情が一瞬揺れる。


「真愛はずるいね。」


トントンと、階段を上がってくる足音が近づく。

どんどん、どんどん近づいて、真愛は少し困った顔をした。


真愛を好きになったのは、僕の方が先だった。


小さい頃からずっと、真愛が好きだった。


でも、


「——まーな!!久しぶりー!!」


がちゃっと扉が開いて、こうが顔を覗かせた時、そこには押し倒された真愛じゃなくって、

少し微妙な距離をとった俺と、呆然とした真愛がいた。


「こうくん、久々。」


真愛がやっと普通を取り繕って笑う。

するとこうも嬉しそうに笑って部屋を出ていった。


もしも、真愛が一方的にこうを想って泣くのなら、俺は多分真愛を手離してはやらなかった。

「しょうくん、さっきの——」
「忘れていいよ。」


真愛が、本当に一方的なら。

でも、僕らは双子だから。

まるっきり違うなんて、あり得ないんだ。


——真愛、好きだよ。


僕らは1つだけ、同じなんだ。

好きな人だけは、ずっと。


「こうのとこ、行って来なよ。」


皮肉なことに、双子が好きになった女の子は、二人のうちの一人を選んでしまった。


じゃあ、もう一人は、

もう何も出来ないじゃないか。


「しょうくん。」

「今、ここにいてほしくない。」
「しょ——」
「行ってよ。」


君は怪盗だ。
とっくの前から、盗む予定の無いものまで盗んでいってしまうくらいの大怪盗だ。


「……私、しょうくんでいい。」


振り返る。
真愛の目は、残酷なほど真っ直ぐだ。


「—…違うね。しょうくんがいい。」


真愛の細い腕が俺に伸びて、ぎゅっと、弱い力が抱き締めた。

「—…それは、こうが手に入らないから…?」


唇が震えた。
それでも良いと、代わりでもいいとさえ思った。


「そうかもしれない。」


弱い力がだんだん、だんだん強くなる。


「でも、違うと思う。」


分からない。
君が分からない。

でも、 もう手離せない。
手離してあげられない。


「気づいたら、しょうくんだった。気づいたら、

しょうくんがよかった。」



大怪盗は予測不能な動きで、獲物を翻弄する。

掴めない。君は昔っから。


でも、もう最初っから僕は君に心を盗まれてしまったんだから、





「仕方ないから一回だけ、君に騙されてみるよ。」


end
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テスト勉強中に急に書きたくなって書いてみたらめちゃくちゃ書きたかった話とずれて

おまけに意味が分からなくなって…。

でも、読んでくださったかたも

私に騙されてみなよ←殴





上手くまとめたつもりで全くまとまってない紅都 蓮