家に帰ると、母は泣いて抱きしめてくれ、父はげんこつをくれた。そして送ってくれた女性に、『緑子様、ありがとうございました』と頭を下げた。
女性が帰ってしまうと、母は晩ご飯にしてくれた。
『そんなに嫌だったの?』
私が泣いていたのは、父が守護の里へ修行に出すと言ったからだった。しかもひとりで。
私は両親が好きだった・・・特にお父様が大好きだった。
他の守護の子どもには、親が付いてきてくれる子もいると聞いたのに、お父様は来ないという。
お父様はお母様が好きだ・・・邪魔な娘がいなくなればいいと思っているに違いない!
・・・本当にそう思った訳でもないのに、私は悲しくなって家を飛び出してしまった。
守護に生まれついた子どもは、みんな守護の里で修行するのは決まり事だ。年齢は早すぎると言うことはない。だいたい10歳よりは前に師範につく。それは精神を病ませないため・・・
私は知らなかったが、一緒についてくるような子供の親は、そのひとも守護であることが多かった。
守護の里は守護のもの・・・守護でないものがいれば秩序を乱してしまう。特に子どもがいる町に、心を律することができる武術の師範でもない常人がいるべきではなかった。
私の両親は普通の天人で、家系にも守護がいたためしはないが、たいていの守護や能力者はこのように突然生まれるものだった。
『守護は、守護でなければ教えられない。私や花では何の助けにもなってやれないんだよ』
お父様はそう言って頭を撫ぜてくれた。
飛び出したお前を追いかけられなかったように・・・
『お前はどうも強い守護になるようだ・・・私の知り合いに見てもらったらそうだと言っていたよ。強ければ強いほど早く師に見えなくてはならない・・・6歳では遅すぎるくらいだと』
『守護の里は守られているから、守護にとっては安全なんですって・・・天仙京ではひとの心がすべて菫に影響を及ぼしてしまう。お前が壊れてしまうんだよ』
お母様は涙もろい。
この頃の私の力は、強い感情をただ受け取ってしまったり、ふとした瞬間に気配を察知したりするだけだったが、両親の気持ちはとても強く響いてきて、私は愛されていることをじんわり感じた。
私の門出は来月と決められ、その晩は久しぶりに二人の間に挟まって眠った。