稽古が終って帰るところに透が来て言った。
『あのさあ』
そのまま続きが出てこない。見ていると、鼻をかいてぼそっと言った。
『紅のことなんだけど、あいつ、すごい真剣だから悪く思わないでやってくれる?』
紅・・・!
『・・・うん。なんか、わかった。きのう・・・』
『きのう?なんかあった?』
ちょっと心配そうに聞いてくる。
いい友達なんだね、紅の・・・
『うん・・・今から、謝りに行くの。・・・急がなきゃ。家にいるかわかんないし』
家にいなければ探さなきゃ・・・どうしても、今日のうちに謝りたい。
『家にはいないと思うよ。町が見渡せる丘の一本木知ってる?』
知ってるわ・・・追い出されたあそこだ。
『そこにいなければ俺ん家か他の友達ん家』
『紅ってなんでいつも家にいないの?』
いつも緑子様に追いかけられてるし。
『家出してんだ。いつも捕まるけど、俺たちで逃がしてやったりしてる』
『そういえば最初会った時言ってたかな・・・』
私の部屋で寝ちゃったのも、寝るとこなかったからなのかも。
『友達ん家で泊まるのも限度あるだろ?だからあの丘の一本木で寝たりしてるらしいぜ。やめさせたいけど、俺ん家もちょっとなぁ』
『木の上で寝てるの!』
『うん。だからよく眠れてないと思うな。その分昼寝とかしてるとは思うけど』
そんな生活してたんだ・・・
『どうして家出なんか・・・』
緑子様は怖そうだけど、ユカリお姉さんは優しそうなのに。
『うん、まあ、色々あんだろ。じゃあ、一本木にいなかったら来いよ。じゃあな』
『ありがとう』