離れた場所で透の気配を感じた。
今にも帰ろうとするような、頼りない気配だった。
紅を振り返ると、沢山の友達に囲まれてじゃれあうような、泣きながらの友達の言葉を笑って受け止めるような、そんな集団の真ん中にいた。
私は透のそばまで行って、袖を引っ張った。
『・・・菫・・・』
私に気づいても、浮かない顔はそのまま・・・
『透はお別れ、しないの?』
紅のことが大好きなのは知っていたから、聞いてみた。
『俺は行かない・・・』
でもその瞳は切ないほど紅を見つめて離れない。せっかくここまで来ているのに。
私の心がきゅうぅっと締め付けられる・・・これは、透の思い・・・
『どうして・・・』
私が言うと、透はバッと逃げ出すように走り出した。
ずいぶんと走って、走り疲れて止まる。
激しい息づかいに膝を折る。ぽろぽろっと涙がこぼれて落ちた・・・!
『だってあいつ、いいにおいなんだもん!肩だって手だって、柔らかいんだもん!・・・最後の最後に女扱いしたら、可哀想じゃないか!』