俺が動かないでいると、菫が俺を呼ぶ声が聞こえた。
菫は心配そうな顔をしてこちらを見てる・・・口は開いていない。菫の心の声だ・・・
「紅、守り石を出して」
守り石・・・ そんなこと、もうできない・・・
即位式で出したのが精一杯だった。その上姉ちゃん達にも出した。これ以上出すなんて不可能だ・・・
すると栗宮様はスッと歩み寄り、菫とつないでいる俺の手を、菫の手ごと持ち上げて蓋をするように左手を重ねた。
栗宮様の温かい手で挟まれた手が、だんだん熱くなる。訳が分からずに菫を見ていると、その顔がだんだんと青くなっていく・・・!
『もう出せるはず』
栗宮様はただそう言って手を離した。その途端ふらついて倒れた菫を受け止める。
『何をした!?』
敬語も忘れて思わず聞いた。栗宮様は平然とした態度で答えた。
『命を少し移動した。大事無い。さあ、守り石を』
命を移動??菫の命を俺に移動したのか!
瞬間怒りで頭がきぃんと鳴り、俺は微笑を浮かべたような栗宮様の顔を睨みつけた!
栗宮様はため息をついて、俺を力で拘束し、右手を開かせる。体中から熱いものが右の手のひらに集まってくるのが感じられて、中央に結晶してゆく、俺の命――
今までのどの時よりも長い時間・・・栗宮様は俺の手を離さない。足から血の気が引いて、力が入らなくなり崩れるように膝をついた・・・まだ離さない。終わらない・・・
結晶が手のひらほどの大きさになるころ、ようやく栗宮様は息をついたが、もうその時俺の意識はなかった。