過去に住まい造りのお手伝いをさせていただいていた時期があり、
今になって ふと、本とか展示場ではあまり見聞きしにくいことを
共有したいと思ったので、少しの知識ですが
よろしければ、おつきあいいただければとおもいます。
さて、一口に住宅といってもさまざまなタイプがあり、
工場でほぼ完成する職人不要なもの。
メーカーの都合を ごりおしされたようなもの。
建築家が前面に立って造られる見た目のセンスの良さを感ずるもの。
昔ながらのクラフトマンシップに依存するもの。
など多種多様です。
今回は最後の、あまり儲からない。工期がかかる。手間もかかる。
一見すると造る側はあまり嬉しくない 住まい にスポットをあててみます。
昔の大工さんは自分の仕事に誇りをもっているので
とにかくよいものを作ることに専念していたように感じていて
対比する現在ありがちな住宅の特徴としては
営業活動・宣伝費 他諸々の必要経費を含め価格設定をし、
さらに25~35年位で取り壊すような質の物を量産する仕組みになってます。
海外では住宅は年が経つごとに資産価値が高まるのが一般的ですが
国内の事情では一定期間の割合で建て替えてもらいたい
ということがあるようです。
それらは気密性を高め魔法瓶のようにして光熱コストを抑える発想で
設計されるのですが、それらを優先すると科学物質が発散され、外に出にくい。
アレルギー・アトピーの原因にもなりうる等、問題をともないます。
そして構造材に関してはエンジニアリングウッドなる
外材を糊で張り合わせた構造材が多用され
メーカーの宣伝文句は強度が高く構造計算が成り立つ
ということなのですが掘り下げてみれば
糊の接着強度が経年劣化しないという前提になりたっているので、
ときがたてば逆に弱くなるということも可能性としてはあります。
最近では構造材の接合部に金具を使う構法がでてきましたが、
木材と鉄の熱伝導率の違いから水滴が発生しやすく
結露の原因になった場合、腐食のきっかけとなります。
すなわち強度の低下を招くというわけです。
それでは昔ながらのクラフトマンシップに依存するタイプの住宅
について、下から工程順に 部位ごとの特徴 を追っていきます。
土台の下の基礎は石を組み上げる。もしくは鉄筋を含むコンクリートとします。
屋根を支える柱は木材ですから あたりまえながら
周りの環境・風土に影響されて育っているので、
建てる家の周りに生えている樹木を同じ方位になるよう伐採して配置しました。
家を建てた後、ピシッと音がするのは木材が呼吸して動くのが原因ですが、
こうしておけば家を建てた後、柱が動きにくいという理屈があります。
そこで育った木なので腐りにくいということもあります。
昔の柱は現在のような3.5寸~4寸のような小径ではなく
燃えしろを考慮した太い柱でした。
木材は火事になると表面は炭になって黒くなりますが
中は燃えにくいという特性があります。
結果、意外と鉄よりも耐火時間が長かったりします。
解体した柱を再利用するときは つないだり、
穴があいているところは“埋木”といった手法で対応。
横架材となる“梁”は手刻みが基本で
釘・金物などは使わず複雑で精巧な つなぎ方に加工されております。
私も家造りにかかわりだしたころは
棟梁の腕と頭脳にとても感心したものでした。
現在では地元で伐採した太い木材があまり流通していないので
“古材バンク”といった一時保管しておく場所があり、
その材を利用して家を建てる人が いたときに梁を売買します。
瓦は粘土を素焼きにした日本瓦をよく見かけますね。
耐久性に優れ、昔の建物を解体すると
作者の名前が裏に刻んであったりして魂をかんじます。
これを組みなおして再度、屋根材に使ったり
地面に埋めて歩道にしたり。など
また瓦ではなく藁葺きなどのときは
竹を削ったものを釘のかわりにして施工するのですが
現在では法律である程度、施工可能な地域が限定されています。
外壁は古い解体した土壁を新しい土と混ぜて発酵。
ワインを熟成さすように、一定期間かけます。
古い土には多くバクテリアが含まれているので
割れにくい良質な壁ができあがるのですが
発酵しているだけに現場に遭遇すると ものすごい匂いがします。
乾けば無臭なんですが。
で、これは、耐火性も優れ、
調湿機能があるので水分を出したり吸収したりして
自然に調整してくれます。
下塗り、中塗り、仕上げと工期もかかり 職人さんも不足していますが
このような優れた点があります。
内部の間仕切りの和紙は土佐和紙とかが有名ですね。
漉き和紙を作る工程は豆腐を作るときと似たように見えなくもありません。
完全に空間と空間を遮断するでもなく、
ほのか に人の気配を感ずるのは日本家屋ならではの特徴でしょう。
これらのパーツはどれも解体して少し手を加え
再利用するという意図があったのではないかと思っていて
(自然とそうなったのかもしれません)
最初に言った、あまり儲からないし工期がかかるし手間もかかる
技法・流儀となるわけですが、かような住宅は住み手にとっては財産であり
結果的には造り手側もいろんな意味で満足を得ることになります。
自然環境と共存し再生も可能な、とても存在感のある住まいとなり
私のなかでは本来あるべきスクラップ アンド ビルドをなしうる
故知にならった魅力ある“住まい”となります。