ブルース・スプリングスティーン、通算18作目のオリジナルアルバムである。
毎度のことながら、日本国内ではまったく盛り上がっていないが、全米、全英ともに、アルバムチャート初登場1位を獲得。
とくにアメリカでは、今回の作品が、11作目の首位獲得にあたり、これはアルバムの全米1位獲得数でいえば、歴代三番目の大記録だとか。(ちなみに1位がビートルズで2位がJAY-Zらしい)
今回も、通常盤と限定盤があり、限定盤には、昨年、ロンドンの「HARD ROCK CALLING」で、予告なしに行われた、アルバム「BORN IN THE U.S.A.」の再現ライブのDVDが収録されている。
もちろん、今回のニューアルバムと、「BORN IN THE U.S.A.」の再現ライブには、何の関連性もなく、これらを抱き合わせて、リリースする意味がよくわからないが、強いて言うなら、今年は「BORN IN THE U.S.A.」のリリースから、ちょうど30年目にあたるので、それのメモリアルといったところか。
全12曲の中には、純然たる新曲以外にも、過去にレコーディングした既発曲の再録音、他人の曲のカバー、そして、これまでライブでのみ歌われていた楽曲の、スタジオバージョンなどが含まれている。
キチンとしたデータが記載されていないので、はっきりしたことはわからないが、録音された時期も、それぞれバラバラのようである。ただし、録音時期が異なっていても、聴いていて、それほど違和感を感じることはなく、アルバム全体を通して聴くと、不思議な統一感がある。
そして、このアルバムの音楽面での、いちばんの特徴は、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリストであるトム・モレロが、多数の曲に参加していることだ。
例のエフェクターを駆使した特徴的なギターの音色が、新旧の音源に被せられることにより、それが良くも悪くも、このアルバムの印象を決定付け、中でも、今回、セルフカバーされた「ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード」の新録音は、ブルースのボーカルとトムのギターとがぶつかり合うことによって、強力な化学反応を起こし、全トラック中、いちばんの目玉といっていいだろう。
しかし、これまでのスプリングスティーンというか、Eストリート・バンドの音の要であった、ロイ・ビタンのピアノのアタック音が、完全にトムのギターに負けてしまい、曲によっては、スプリングスティーンがレイジをバックに歌っているようにも聴こえる。
スプリングスティーンの曲なのに、スプリングスティーンの音になっていないとでも言うべきか。…今回の新作「HIGH HOPES」を聴いたとき、「何か違う」と感じたのは、そこの部分だった。
一方で、ベテランミュージシャンにとって、非常に便利な逃げ道である「円熟」というスタイルに向かわず、60代も半ばに差し掛かろうかという年齢にして、今なお、こうした新しい音に挑戦し、追求しようという音楽的な姿勢は評価すべきだと思う。
しかし、やはり何か違うのだ。
ところで、今回のアルバムに収録されたセルフカバーである「アメリカン・スキン(41ショット)」と「ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード」を、ブルース自身は「キャリア史上最高の楽曲たち」と語っているようだが、この2曲、そんなに優れた曲だろうか。
2曲とも、社会的なメッセージ性を帯び、アメリカの「負の部分」を、鋭く抉(えぐ)った曲だとは思うが、そんなに良い曲だろうか。
…どう考えても、自分には平均以下の曲にしか思えないのだが。
他の曲にしても、今回のオリジナル曲は、全体に印象が薄く、皮肉なことに、この作品で、ブルースがカバーした他人の曲の中には、優れた楽曲が多く、それらのカバー曲によって、どうにかアルバム全体が、一定のクオリティを保っているようにも思える。
今回のツアーでは、トム・モレロもメンバーとして、同行しているはずだが、ライブでは、はたしてどういう音に仕上げているのだろう。
ツアーの初日である、ヨハネスブルグでのコンサートのセットリストをみると、アンコールで「SHOUT」とあるが、おそらくこれは十中八九、アイズレー・ブラザーズの「SHOUT」を演奏したのだと思うが、はたしてトム・モレロのギターの音で、こんな曲を演奏して、大丈夫なのだろうか。
音を聴いてみないことには、何ともいえないが、今度のライブは、あまり過度な期待はしないほうがいいような気がする。
今回は、どうも、ネガティヴな感想ばかりになってしまった。
毎度のことながら、日本国内ではまったく盛り上がっていないが、全米、全英ともに、アルバムチャート初登場1位を獲得。
とくにアメリカでは、今回の作品が、11作目の首位獲得にあたり、これはアルバムの全米1位獲得数でいえば、歴代三番目の大記録だとか。(ちなみに1位がビートルズで2位がJAY-Zらしい)
今回も、通常盤と限定盤があり、限定盤には、昨年、ロンドンの「HARD ROCK CALLING」で、予告なしに行われた、アルバム「BORN IN THE U.S.A.」の再現ライブのDVDが収録されている。
もちろん、今回のニューアルバムと、「BORN IN THE U.S.A.」の再現ライブには、何の関連性もなく、これらを抱き合わせて、リリースする意味がよくわからないが、強いて言うなら、今年は「BORN IN THE U.S.A.」のリリースから、ちょうど30年目にあたるので、それのメモリアルといったところか。
全12曲の中には、純然たる新曲以外にも、過去にレコーディングした既発曲の再録音、他人の曲のカバー、そして、これまでライブでのみ歌われていた楽曲の、スタジオバージョンなどが含まれている。
キチンとしたデータが記載されていないので、はっきりしたことはわからないが、録音された時期も、それぞれバラバラのようである。ただし、録音時期が異なっていても、聴いていて、それほど違和感を感じることはなく、アルバム全体を通して聴くと、不思議な統一感がある。
そして、このアルバムの音楽面での、いちばんの特徴は、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリストであるトム・モレロが、多数の曲に参加していることだ。
例のエフェクターを駆使した特徴的なギターの音色が、新旧の音源に被せられることにより、それが良くも悪くも、このアルバムの印象を決定付け、中でも、今回、セルフカバーされた「ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード」の新録音は、ブルースのボーカルとトムのギターとがぶつかり合うことによって、強力な化学反応を起こし、全トラック中、いちばんの目玉といっていいだろう。
しかし、これまでのスプリングスティーンというか、Eストリート・バンドの音の要であった、ロイ・ビタンのピアノのアタック音が、完全にトムのギターに負けてしまい、曲によっては、スプリングスティーンがレイジをバックに歌っているようにも聴こえる。
スプリングスティーンの曲なのに、スプリングスティーンの音になっていないとでも言うべきか。…今回の新作「HIGH HOPES」を聴いたとき、「何か違う」と感じたのは、そこの部分だった。
一方で、ベテランミュージシャンにとって、非常に便利な逃げ道である「円熟」というスタイルに向かわず、60代も半ばに差し掛かろうかという年齢にして、今なお、こうした新しい音に挑戦し、追求しようという音楽的な姿勢は評価すべきだと思う。
しかし、やはり何か違うのだ。
ところで、今回のアルバムに収録されたセルフカバーである「アメリカン・スキン(41ショット)」と「ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード」を、ブルース自身は「キャリア史上最高の楽曲たち」と語っているようだが、この2曲、そんなに優れた曲だろうか。
2曲とも、社会的なメッセージ性を帯び、アメリカの「負の部分」を、鋭く抉(えぐ)った曲だとは思うが、そんなに良い曲だろうか。
…どう考えても、自分には平均以下の曲にしか思えないのだが。
他の曲にしても、今回のオリジナル曲は、全体に印象が薄く、皮肉なことに、この作品で、ブルースがカバーした他人の曲の中には、優れた楽曲が多く、それらのカバー曲によって、どうにかアルバム全体が、一定のクオリティを保っているようにも思える。
今回のツアーでは、トム・モレロもメンバーとして、同行しているはずだが、ライブでは、はたしてどういう音に仕上げているのだろう。
ツアーの初日である、ヨハネスブルグでのコンサートのセットリストをみると、アンコールで「SHOUT」とあるが、おそらくこれは十中八九、アイズレー・ブラザーズの「SHOUT」を演奏したのだと思うが、はたしてトム・モレロのギターの音で、こんな曲を演奏して、大丈夫なのだろうか。
音を聴いてみないことには、何ともいえないが、今度のライブは、あまり過度な期待はしないほうがいいような気がする。
今回は、どうも、ネガティヴな感想ばかりになってしまった。