年末土曜、私は浮かれていた。バイトに明け暮れ、待ちに待った休みの日、友人たちと飲みまくり、解散後に彼女とお泊りをした。私はこの時まだ知らなかった。翌日38度の熱が出て胃腸炎になり、年末年始のバイトを全てキャンセルし、実家に強制送還されることになることを...
原因はわかっている。酢だ。私は慣れないWワーク(昼に清掃、夜に居酒屋)が12月から始まることをなんとなく不安に思っていた。それを解決するはずだったもの、それこそが酢だったのだ。エナジードリンクは飲めば元気が出る。でも長期的に考えると体に悪い、そこで見つけたのが酢。クエン酸は疲労の原因を分解し、アミノ酸は活力を与えてくれる。でも、薄めなければ胃に悪いという注意書きを軽くとらえ、自ら胃にダメージを与えるという愚行をおかした。いや、おかし続けていた。結果、胃は炎症を起こし、熱を出し、体調は崩れていった。
彼女とお泊りの翌日、私は綺麗に身支度を整え、二人で何か食べようとホテルを出た。私は強烈な眠気に逆らうことができず、歩いている時も片方の目を瞑りながら眠っていた。というか身支度をしている時からずっと眠い。ほとんど両目を瞑って着替えていた。眠ったはずなのに眠く、デートのはずなのに私は寝ていた。軽く寝れるからという理由でファミレスがいいという私に、彼女は黙ってうなずいた。ファミレスについて一時間、私は寝ていた。彼女は黙ってうなずいた。豪遊してリフレッシュのためにお金を使うのが夢心地の昼寝とするならば、この時の私の眠りは借金返済のためにお金を取られるような、そんな苦しみを伴うものだった。彼女は一時間を過ぎたあたりから機嫌が悪くなっていった。当然である。用事もないのに一人でファミレスにいるのと変わらない状況。だって、一人は寝てるから。ずっと眠ってるから。むしろよく着いてきてくれた。有難う。この場を借りてお礼申し上げる。
ふとトイレに立ち、異変を察知した。吐き気、吐き気、吐き気。トイレにこもり、出てきた頃には彼女も私の異変に気づいた。そこからの展開は早い。彼女は近くに住む私の弟に連絡を取り、近くの病院を調べてくれた。弟は実家から来ていた父親と駆けつけてくれ、肩を持って病院まで案内してくれた。病院で胃腸炎と診断され、車で寝ているうちに起きたら長野県の実家に。そういえば、ファミレスのお金、病院のお金、薬の受け取り、保険証とか、全部やってくれたってことなのか。この場を借りてお礼申し上げる。
ちなみにこの話は、ハッピーエンドである。年末年始のバイトが全てキャンセルになり、実家で飲食睡眠ゲーム三昧の極楽天国だったから。神様にこの場を借りてお礼申し上げる。